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米大統領選の焦点 極左が暴動・略奪を扇動


決戦まで2カ月―米大統領選の焦点(1)

揺らぐ秩序に強まる懸念

 11月3日に行われる米大統領選まで2カ月を切った。勝敗を左右する選挙戦の「焦点」を追った。(編集委員・早川俊行)

米ウィスコンシン州ケノーシャで先月起きた暴動で

米ウィスコンシン州ケノーシャで先月起きた暴動で放火された中古自動車販売店(UPI)

 他人の物を盗んではいけない。小学生でも分かる常識が、今の米国では通用しなくなっている。

 イリノイ州シカゴで先月、黒人少年が警官に射殺されたというデマ情報がソーシャルメディアで流れたことをきっかけに、暴徒が高級商店街「マグニフィセント・マイル」に押し寄せ、略奪を繰り広げた。この商店街が略奪の被害に遭うのは、ミネソタ州ミネアポリスで起きた白人警官による黒人暴行死事件直後の5月以来、わずか3カ月間で2度目のことだ。

 「グッチやナイキの店を略奪しても構わない。欲しい物は何でも奪っていい。店は保険に入っている」

 略奪が起きた翌日、黒人差別に反対する「黒人の命は大切」(BLM)運動の活動家たちは、逮捕された100人以上の犯罪者を支援する集会を開いた。シカゴのBLMリーダー、アリエル・アトキンス氏は、テレビカメラが回る前で絶叫しながら、略奪行為を奨励したのだった。

 略奪が許される理由としてアトキンス氏が強調したのが、「賠償」だった。米国が経済的繁栄を享受しているのは、黒人を奴隷として働かせたからであり、その賠償として金品を強奪するのは正当な行為、というロジックである。

 BLMは各地で暴力を伴う激しい抗議活動を巻き起こしてきたが、この運動は極左勢力に操られている。BLMを立ち上げた黒人女性のパトリッセ・カラーズ氏は、2015年のインタビューで、自身と共同発起人のアリシア・ガーザ氏は「訓練されたマルクス主義者」だと明言した。

 「略奪正当化論」は、大手メディアでも堂々と論じられている。米公共ラジオ(NPR)の電子版は、『略奪を擁護する』という本を出版したライターのビッキー・オスターウェイル氏とのインタビュー記事を掲載。同氏はこの中で、略奪を「民衆が必要なものを即時に手に入れる」ための手段であり、「財産という概念に対する攻撃」と位置付けた。私有財産を強制的に奪って富を分配する考え方は、共産主義そのものである。

 オスターウェイル氏は、オレゴン州ポートランドなどで破壊活動を繰り広げる極左集団「アンティファ」のシンパとされる。そのような人物の暴論を国民の税金で運営されるメディアが垂れ流したという事実が、秩序が揺らぐ米社会の現状を物語っている。

 ポートランドでは暴力的な抗議活動が100日以上も続き、ウィスコンシン州ケノーシャでも先月下旬、黒人男性が警官に銃撃を受けた事件をきっかけに暴動・略奪が発生し、一部地域が放火で焼け野原になった。各地で炎が上がる様子が連日ニュースで流れることで、「法と秩序」が大統領選の主要争点に浮上してきた。

 トランプ大統領は、バッシングを浴びる警察を一貫して支持する一方、過激なデモ隊を「無政府主義者、扇動者、暴徒、略奪者だ」と非難してきた。これに対し、民主党候補のバイデン前副大統領は、党大会での演説で暴動への言及を避けた。民主党の政治指導者たちは、抗議活動を「平和的デモ」と擁護し、ニューヨークなど主導権を握る自治体で過激派の要求に応じて警察予算を削減してきた。

 当初は国民の多くが抗議活動に共感を示し、トランプ氏の対応に批判的だったが、その流れが変わり始めている。トランプ氏がバイデン氏との支持率を差を縮めているのは、一向に止まない暴力に懸念が強まっているためだ。

 新型コロナウイルスに集中していた有権者の関心が治安問題に移行することは、トランプ氏に有利に働くとみられている。