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米共和党大会 伝統的価値の訴え波及するか


 米国の大統領選を11月に控え、共和党大会でトランプ大統領が正式に候補者指名された。ただ、同党で2016年に政治に無関係な富豪のトランプ氏が大統領予備選で旋風を起こして勝ち進んだことに伴う党内の亀裂は修復できなかった一方、大会で打ち出される自由、家庭、秩序など伝統的価値の訴えが波及するか不安は残る。

敵を増やしたトランプ氏

 新型コロナウイルス感染対策のため、共和党もノースカロライナ州シャーロットの特設会場を拠点に、民主党大会に続いてインターネットとビデオによる大会を余儀なくされている。

 発言をする代表者らは、個人の自由、家庭、教会を守り、これら伝統的な価値を守ることによって米国を、チャンスのない社会主義の国ではなく、夢を実現できる偉大な国であらしめる大統領として、トランプ氏の再選を口々に強く訴えた。

 また、家庭の秩序や価値をゆがめかねない過激な性教育を教室に持ち込む民主党系の教職員労組に対する警戒や、教育に自由を求める訴え、新型コロナ感染拡大による経済後退の中で民主党が掲げる増税政策への批判などの主張が数々なされた。

 ただ、共和党は一枚岩になっていない。民主党大会ではカーター、クリントン、オバマの元・前大統領ら党の重鎮が応援演説を寄せ、これに共和党人士の支持発言も加わった。

 前回、政治的妥当性を度外視した暴言によって注目を浴びて頭角を現したトランプ氏に共和党主流の政治家は反発し、ブッシュ(子)元大統領はじめ大会出席を見送っていた。今回、同党の反トランプ派は「リンカーン・プロジェクト」というトランプ氏落選運動を組織しており、大統領選の勝敗を左右するフロリダ州など接戦州への影響は避けられないとみられる。

 トランプ氏の手法や言動が敵を増やしたことは否めない。ボルトン大統領補佐官ほかホワイトハウスのスタッフ、またコミー連邦捜査局(FBI)長官らの更迭を繰り返し、また党派を超えて信望が厚かった故マケイン上院議員とも対立し、自身への批判を増やした。

 しかし、党大会でトランプ氏を応援する党員も落選運動を組織する反トランプ派も、共和党の政策を支持することに違いはない。民主党はオバマ政権から左傾化を強めており、政治的遺恨からトランプ氏一人を除くために政権を明け渡し、米国に左翼的政権が登場するリスクも見過ごせない。

 米ピュー・リサーチ・センターの調べでは、民主党候補のバイデン前副大統領を支持する人の理由は「トランプ氏ではないから」という回答が56%で圧倒的だ。これでは、政策選びにも人物を積極的な理由で選ぶ選挙にもならないだろう。

 新型コロナ感染拡大とトランプ氏への嫌悪によって、温厚そうに見えるバイデン氏を隠れ蓑(みの)に、民主党内の過激なリベラル政策が舞い戻りかねない

 弱体化回避の忍耐を期待

 伝統的価値観や歴史観を変えることによって米社会に混乱を招き、米国の弱体化につながることを回避する忍耐を米国有権者に期待したい。