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露の対日政策、人事で変化は見られるか


 ロシアのプーチン大統領はこのほど大統領府長官セルゲイ・イワノフ氏(63)を更迭し、副長官アントン・ワイノ氏(44)を昇格させる人事を断行した。プーチン大統領と同じ旧ソ連の国家保安委員会(KGB)出身のイワノフ前長官は大統領の側近中の側近で、2000年の政権発足以来、安全保障会議書記、国防相、副首相、第1副首相などの要職にあって大統領を支えてきた。

大統領府長官が知日派に

 この大物の事実上の解任の意図についてはさまざまな憶測を呼んでいるが、過去1年間のロシア鉄道社長、連邦税関局長官、連邦警護局長官、連邦麻薬取締局長官らの更迭と合わせて、9月の議会選挙と18年の次期大統領選挙を見据えた大統領による「実務能力本位の若返り人事」と受け止める向きが多い。

 11年12月第13代大統領府長官に就いたイワノフ氏は、4年の在任期間というのが当初の大統領との約束だったが、既に4年8カ月が過ぎたと述べた。退任後は、環境問題、交通運輸担当の大統領特別代表を務めるかたわら、従来関心のあるアムールトラの生息環境改善など自然保護活動に従事するという。

 従って、今回の人事は日露関係には直接の関わりはないとみられているが、イワノフ氏の推薦で昇格したワイノ氏の新長官就任で、ロシアの対日政策に変化が表れるのかどうかに注目が集まっている。

 というのも、ワイノ氏はクレムリンの要人の中で数少ない知日派の一人だからだ。旧ソ連エストニア共和国の首都タリン出身で、祖父はブレジネフ時代からゴルバチョフ政権までエストニア共産党第1書記(1978~88)を務めたカール・ワイノ。ロシア紙ベドモスチは「(アントン氏は)ソ連時代の党幹部の血を引き、個人的にはプーチン氏に忠実な人物」と評した。

 ワイノ氏はモスクワ国際関係大学国際関係学部を96年に卒業後、外務省に入り、すぐに東京の駐日ロシア大使館に勤務。01年まで約5年間在勤して本省に戻り、第2アジア局で働いたあと、02年ロシア大統領府儀典局に移り、副局長、第1副局長、さらにロシア連邦政府官房副長官、首相府儀典局長兼内閣官房副長官、連邦大臣兼内閣官房長官、大統領府副長官(12年5月から)を歴任した。

 ワイノ氏の略歴を見る限り、政治歴の背景や性格が前任者たちと全く異なる。対外的に強硬派と見られたイワノフ前長官との比較で、ロシア紙ノーバヤ・ガゼータは「彼は効率を追求するマネジャーであり、陰謀を避ける穏やかな官僚だ。彼の登場は(ロシアの)攻撃レベルの減少に導き得る」と解説した。日露首脳会談の準備でワイノ氏と交渉した日本の外交官は「日本語も達者で折り目正しく、まじめに仕事に取り組んでいた」との印象を持ったという。

新長官の影響見極めたい

 ワイノ氏は日本勤務を終えてから儀典部門を歩んでおり、日露関係に直接関与することはなかったようだが、プーチン大統領の年内訪日に向けて調整が進む中、今後、対日外交の新たなキーマンとなり得る新長官就任の影響を見極めたい。