世界日報 Web版

イラン核合意、核開発阻止へ多国間の連携を


 米国がイラン核合意から離脱して1年。制裁を強化する米国と、反発を強めるイランとの間の緊張が急速に高まっている。

一部履行停止を表明

 イランのロウハニ大統領は、核合意で定められた低濃縮ウランと重水の国内保管量の上限を今後は順守しないと発表。さらに、合意に参加している英国、ドイツ、フランスと交渉を行い、60日以内に合意できない場合は高濃縮ウランの製造を再開することを明らかにした。

 高濃縮ウランの製造は核合意で禁止されており、実施されれば、合意の枠組みそのものが崩壊する可能性すらある。合意離脱をちらつかせる脅しは、緊張を高めるだけだ。

 発効から4年となる核合意は、イランの核開発を大幅に制限する見返りに、イランへの制裁を解除するというもの。オバマ前米政権が主導した融和策の一環であり、核開発の制限が10~15年に限定されるなど、核開発の恒久的な阻止を確実にするものではない。

 トランプ政権は、核開発凍結が期限付きであり、ミサイル開発が合意に含まれておらず、イランがシリア、イエメンなど周辺諸国への介入を強めていることなどから、昨年5月に一方的に離脱した。

 一方、合意に参加した6カ国のうち、米国を除く英独仏、中国、ロシアは合意の継続を主張し、米国と対立している。

 さらに今月に入り、昨年11月から実施されている米国の原油禁輸の猶予措置が終わり、日本など8カ国に対する原油輸出も制裁対象となった。国家収入の3分の1を原油輸出に頼るイランにとって禁輸は致命的だ。

 イラン経済は、この1年間の制裁で、通貨リアルが暴落、失業率が上がり、インフレ率が40%に達するなど、大きな打撃を受けている。イランはこれまで制裁を受けながらも、核合意を順守してきてきた。ロウハニ大統領の今回の発表は、欧州からの経済的後押しに期待してきたイランの最後通告ともとることができる。

 米国は、イランが米国人への攻撃を計画しているとして、空母打撃群と戦略爆撃機を中東に派遣することを発表した。ポンペオ国務長官が、イラクを急遽(きゅうきょ)訪問し、イラク政府に米国人保護で協力を求めたばかりだ。

 イランがミサイルを船舶に乗せて移動させているという情報もあり、ペルシャ湾での緊張が一気に高まった。イランは原油の全面禁輸を受けて、ホルムズ海峡の封鎖の可能性を示唆するなど、反発を強めている。

 懸念されるのは、偶発的な衝突を契機に、大規模な紛争へと発展することだ。ホルムズ海峡での有事は、世界経済に致命的な影響を与える。

 この1年の厳しい経済制裁にもかかわらず、イランに譲歩の姿勢は見えず、制裁が効果を挙げているとは言えない。米国一国による制裁に限界があるのは明らかだ。

日本も外交努力惜しむな

 緊張緩和とイランの大量破壊兵器開発阻止へ、多国間の枠組み、最低でも協力体制を築くことが必要だ。イランと比較的良好な関係を持つ日本も外交努力を惜しんではならない。