世界日報 Web版

パレスチナ問題、和平への新たな道模索を


 自治開始から20年以上がたつパレスチナの処遇をめぐる未来が、いっそう不透明感を増している。

 2国家共存から方針転換

 トランプ米大統領は15日、訪米したイスラエルのネタニヤフ首相と会談、その後の共同会見で「2国家と1国家両方を考えているが、両者が望む形にしたい」と述べた。

 「2国家共存」によるパレスチナ和平にはこだわらないという姿勢を示したことになる。トランプ氏が情勢をどこまでよく検討した上でこの発言をしたのかは不明だが、これがトランプ氏の真意なら、これまで歴代の米政権が取ってきた対パレスチナ政策からの大きな転換を意味する。

 2国家共存は、ヨルダン川西岸、地中海岸のガザ地区、東エルサレムを将来独立するパレスチナ国家の領土とするというもの。パレスチナ自治政府は、東エルサレムを首都とすることを主張している。国際社会からも支持を得てきた案だ。

 ところが、イスラエルとパレスチナ間の和平交渉は進んでいない。1993年のオスロ合意でパレスチナ自治政府を誕生させたクリントン米大統領をはじめとする米政権、欧州などが、2国家を前提とした仲介努力を続けてきたにもかかわらず、和平の形はいまだ見えてこない。

 一方でイスラエルの一部の右派の間では「1国家」案が支持されてきた。西岸、ガザ地区を併合し、一つの国家にするという案だ。全人口1600万人のうち、イスラム教徒やキリスト教徒のパレスチナ人が多数派を占めるようになることは間違いなく、独立宣言にうたった「ユダヤ人国家」は消滅しかねない。

 パレスチナ人を隣国ヨルダンなどアラブ諸国に移住させるなど乱暴な主張もあるが実行は不可能だろう。右派政権が進める入植地建設も、和平交渉停滞の一因となってきた。

 また、ガザを実効支配するイスラム根本主義組織ハマスも、和平への大きな障害となっている。アッバス自治政府議長率いる自治政府が支配する西岸とたもとを分かち、「事実上の独立国」(ベネット・イスラエル教育相)を形成している。

 ハマスは、イスラエルの存在そのものを否定。イスラエルを破壊し、地中海からヨルダン川までの全域を支配下に置くパレスチナ国家の建設を目指している。

 イスラエルとしては、強力な敵対勢力を抱えるパレスチナの独立を認めることは、国防上難しい。

 トランプ氏の2国家共存にこだわらない姿勢を受けて、和平交渉は仕切り直しという場面もあり得る。既にイスラエル政府内からも、1国家、2国家の両案に対する懐疑的な見方まで出てきている。

 行き詰まった枠組み破壊

 トランプ発言が、パレスチナ情勢に一石を投じたことは確かだ。行き詰まった既存の枠組みを一度破壊することで、新たな道を開く機会が生まれる可能性はある。和平への新たな道筋を付けるため、当事者、国際社会の知恵と真摯(しんし)な取り組みが必要だ。