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イラン核合意、核とテロ支援への監視怠るな


 イランと欧米など6カ国がイラン核開発問題をめぐって合意に達した。核開発を大幅に抑制し、査察を強化する一方で、国連、欧米各国が段階的に制裁を解除する。確かに「歴史的」だが、多くの問題をはらんだ合意でもある。

制裁解除で大量の資金

 欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表(外相)は「歴史的な日」と合意をアピールした。オバマ米大統領は「米国と同盟各国の国家安全保障上の利益にかなう」と手放しの喜びようだ。

 イラン側としては、核開発が今後10年から15年にわたって大幅に制限されるものの、従来主張してきた「核開発の権利」を公式に獲得したことになる。

 さらに、イラン国民からの合意への支持も強い。これは、国民経済を直撃してきた制裁の解除への展望が開けてきたことが大きいとみられる。国内の歓迎ムードに、西側との合意に否定的な保守勢力も表立っては反対しづらい事態となっている。

 欧米との交渉で一定の成果を上げたことで、イランは中東地域の大国としての威信を保ったことになる。ガス埋蔵量世界一、原油は世界第4位という資源国でもあり、制裁が解除されれば地域の経済大国への道も開けてこよう。

 オバマ大統領としては、孤立させるのではなく、国際的な政治・経済体制の中に取り込んでいくことでイランの穏健化を進める腹積もりだろう。だが、それが成功する保証は全くない。ロシアとの「リセット外交」は完全に失敗し、対露関係は今や冷戦終結後最悪とまで言われる。

 合意には米共和党が強く反発しており、合意実施のための法案に反対することを明らかにしている。共和党は上下両院で多数派を占めており、オバマ氏は国内で大きな障害にぶつかったことになる。イランの宿敵であるイスラエルのネタニヤフ首相も「あっと驚くような歴史的間違い」と憤りをあらわにした。

 イランは1979年の革命後、反イスラエルを前面に掲げ、アハマディネジャド前大統領は「イスラエルを地図上から消し去る」とまで公言した。合意はイランの核保有を先延ばししただけであり、イスラエルとしては到底受け入れられるものではない。「イランへの空爆も辞さない」とイランやオバマ政権を牽制してきたのはそのためだ。

 制裁が解除されれば、イランは大量の資金を手にする。レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマス、イエメンのフーシ派など過激組織への支援が拡大されるのは間違いないだろう。ヒズボラ、ハマスはイスラエル殲滅(せんめつ)を訴え、攻撃を行ってきた。

 サウジアラビアなどスンニ派諸国からも強い懸念が表明されている。今後、国際原子力機関(IAEA)との交渉で査察手順などが決められることになろうが、軍事施設への査察も条件付きであり、早くも妨害が予想されるほど合意はもろい。

地域の不安定化回避を

 欧米諸国としては査察を着実に実施し、イランの核武装を阻止することが重要だ。過激組織への支援にも目を光らせ、地域の不安定化につながらないようにすることが求められる。

(7月18日付社説)