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イスラエルとアラブ 「アブラハム合意」1年


クシュナー前米大統領上級顧問 正常化の停滞を警告

米国務長官が記念会議開催
平和協定の拡大支持

8月27日、ホワイトハウスで会談するイスラエルのベネット首相(左)とバイデン米大統領(A仏パスツール研究所 FP時事)

8月27日、ホワイトハウスで会談するイスラエルのベネット首相(左)とバイデン米大統領(A仏パスツール研究所 FP時事)

 イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンのアラブ2カ国が昨年9月、米ホワイトハウスで国交正常化協定に調印してから15日で1年を迎えた。バイデン米大統領は8月27日、6月に就任したイスラエルのベネット首相とホワイトハウスで初めて会談し、イスラエルとアラブ諸国との平和協定の取り組みへの支持を表明した。

 しかし、中東和平問題を主導する特使を任命しておらず、トランプ前米大統領の娘婿で、中東和平を担当する大統領上級顧問を務めたクシュナー氏は、国交正常化合意をこのまま停滞させてしまえば、これまでの成果が無に帰すと警告した。(エルサレム・森田貴裕)

 ブリンケン米国務長官は、クシュナー氏が警告を発した14日、イスラエルとアラブ諸国との国交正常化調印1周年記念オンライン会議の開催を発表した。ブリンケン氏は17日の記念オンライン会議で、「バイデン政権は、トランプ前政権が成功させた国交正常化に向けた取り組みを受け継いでいく」と述べ、他のアラブ諸国も後に続くよう呼び掛けた。

 会議には、イスラエルのラピド外相、12月に合意したモロッコのブリタ外相、UAEのガルガシュ元外相、バーレーンのアブドラ・アル・ハリファ駐米大使が参加した。

 ブリンケン氏は、「米国は平和的な外交の輪を広げたい。イスラエルが他の国々と同じように扱われることは、中東地域全体および世界中の国々の利益になる」と述べた。また、イスラエルとの国交正常化を支援するため、三つの主要な取り組みを打ち出した。①イスラエルとUAE、バーレーン、モロッコ、スーダン、コソボとの関係を促進する②イスラエルと長年の和平協定を結んでいるエジプトおよびヨルダンとの既存の関係を深める③より多くの国がイスラエルと国交を正常化するための平和協定「アブラハム合意」への参加を推奨する。

 イスラエルは、昨年8月13日、米国のトランプ前大統領の仲介でUAEと国交正常化に合意し、9月11日にはバーレーンとも合意。米ホワイトハウスで同月15日に、イスラエルとUAE、イスラエルとバーレーンのそれぞれの2国間合意文書に署名した。10月にスーダン、12月にモロッコがイスラエルとの国交正常化に合意した。コソボは今年2月1日、イスラエルとの国交正常化合意文書に署名した。

 オンライン会議への参加を見送ったスーダンは、イスラエルとの国交正常化に合意はしたものの、国内では依然として反イスラエル感情が強く、その後も慎重な姿勢を続け正式な国交樹立には至っていない。

 ネタニヤフ前政権でスーダン暫定政府に国際刑事裁判所の手続きを助言するなどしたニック・カウフマン弁護士によると、スーダンの国交正常化の進展の遅れは、イスラエルとの関係改善に向け一歩を踏み出した軍事評議会と、パレスチナを支持する文民主導の政府との対立が一因だという。

 ラピド氏は会議で、「国交正常化合意による直接貿易を通して6億5000万㌦(約714億円)以上、その他の契約でさらに数億㌦の恩恵を享受することができた」と語った。また、イスラエルと外交関係のある国に対し、パレスチナ経済と地域の治安のため、ガザ地区の安全保障に基づく経済問題の取り組みへの参加を呼びかけた。今回の会議は、エジプトとイスラエルの国交樹立の道を開いた「キャンプデービッド合意」42周年に当たり、感激しているとも語った。

 ラピド氏は6月29日、UAEとの国交樹立後にイスラエルの現役閣僚として初めて首都アブダビを訪問し、在UAEイスラエル大使館の開設式典に出席。アブドラ外務・国際協力相と会談し、経済と貿易に関する協定に署名した。8月11日には、モロッコの首都ラバトでブリタ外相と会談し、両国間の関係強化のため、政治や文化、スポーツおよび航空業務に関する協定や覚書に署名した。

 ラピド氏は、9月末までにバーレーンを初訪問する予定で、首都マナマにイスラエル大使館を開設するという。

 こうしたイスラエルの外交努力に加え、今後、イスラエルとアラブ諸国との国交正常化をさらに拡大させるには、バイデン米政権でもパレスチナ問題の解決を主導する特使が必要だ。