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和平交渉再開へカイロで3者会談 アラブ諸国、アッバス議長を支持


イスラエルはパレスチナ経済強化へ

 パレスチナでは、15年ぶりに行われる予定だった5月のパレスチナ自治評議会(議会)選挙を延期したアッバス自治政府議長への信頼が失われ、政治と経済の危機に直面している。一方、イスラエルは、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエル軍との5月の交戦後、ハマスを弱体化させるため、アッバス氏を支持する方針を取っている。米国は、パレスチナのアッバス政権を強化し、イスラエルのベネット連立政権の存続を強く求めている。(エルサレム・森田貴裕)

パレスチナ自治政府のアッバス議長(左)とイスラエルのガンツ国防相(AFP時事)

パレスチナ自治政府のアッバス議長(左)とイスラエルのガンツ国防相(AFP時事)

 米ニューヨークの国連本部で9月下旬に各国首脳らが行う国連総会に先立ち、アッバス氏は2日、エジプトの首都カイロで、エジプトのシシ大統領、ヨルダンのアブドラ国王と3者会談を行った。2017年以来となった3者会談では、イスラエルとパレスチナによる和平交渉を再開するための議論の活性化に向けて協力することで一致した。また、3者会談の閉会時の声明で、将来、東エルサレムに首都を置く独立したパレスチナ国家を樹立し、イスラエルとの「2国家共存」が平和と安全を実現する唯一の道だとした。さらに、イスラエルとパレスチナの和平交渉の主要な仲介役は、米国単独ではなく、中東カルテットが主導するよう呼び掛けた。中東カルテットは欧州連合(EU)、ロシア、米国、国連の4者で構成される。アッバス氏は「われわれは国際法に従い、中東カルテットの枠組みの下で、包括的で公正な平和のために協力する」と述べた。

 これに先駆け、アッバス氏はシシ氏と会い、最新の政治情勢、パレスチナ自治区の状況、ガザ地区を含めたパレスチナ全体の進展について話し合った。シシ氏は、イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区でのパレスチナ自治政府の役割を拡大することへの支持を表明し、イスラエルとパレスチナの交渉の再開を推進すると述べた。エジプトは5月、イスラエルとハマスの停戦の仲介を主導した。

 米国の中東ニュースサイト「メディアライン」によると、米シンクタンクであるカーネギー国際平和基金の上級研究員で、民主・共和両党の政権で中東問題の顧問を務めるアーロン・デービッド・ミラー氏は、カイロでの3者会談はアッバス氏にとって、イスラエルと強い協力関係にあるエジプトとヨルダンから、2国家共存とパレスチナの主要プレーヤーとしてのアッバス氏自身の支持を集めるためだったと指摘する。また、3者会談は「アラブ諸国がパレスチナの主役としてアッバス氏を諦めていないというシグナルをハマス、イスラエル、米国に送っている」と述べた。

イスラエル

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 一方、イスラエルのベネット首相は8月27日、米首都ワシントンのホワイトハウスでバイデン米大統領と初めて会談した。両首脳は、イスラエルとパレスチナの紛争解決を成功させるための最適な条件が整うまで現状を維持することについて協議した。ベネット氏は、現時点では和平交渉は不可能であり、アッバス氏と直接会談するつもりはないとしている。

 この会談後、イスラエルのガンツ国防相が29日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のラマラを訪れ、アッバス議長と会談した。自治政府議長がイスラエルの閣僚と会談するのは11年ぶりだ。イスラエル国防省の声明によると、会談ではパレスチナ自治区の治安や経済問題などについて協議。ガンツ氏はアッバス氏に対し、「パレスチナの経済を強化する方策を取る用意がある」と伝え、今後も対話を継続することで一致したという。

 米国は1991年から30年間、中東和平プロセスを仲介してきたが、バイデン米大統領はイスラエルとパレスチナの紛争の解決策を提示していない。バイデン氏はイスラエルとパレスチナの2国家共存を支持しているが、トランプ前政権下で悪化したパレスチナとの信頼関係を修復するため、パレスチナ人への経済開発援助などの暫定的な措置に焦点を置いている。

 中東和平交渉に向けて、米国をはじめとした中東カルテットが今後、どのようにその役割を果たしていくのか注目される。