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イラン大統領選 中東の安定化を止めるな


 イラン大統領選で保守強硬派が勝利したことで、イランが対外強硬路線に後戻りするのではないかと懸念されている。イランの核開発を阻止するとともに、周辺地域への脅威を封じ込めるため、国際社会の一致した取り組みが必要だ。

 保守強硬派ライシ師勝利

 次期大統領のライシ司法府代表は、検事総長、イスラム教シーア派聖地の聖廟財団のトップを務めた。最高指導者ハメネイ師に近いとされ、82歳と高齢の同師の後継との見方も出る保守派の有力者だ。

 だが1980年代の反体制派大量処刑への関与が指摘され、トランプ前米政権時に制裁を科されている。人権団体も「殺人、失跡、拷問に対する罪を問われることなく大統領職に上り詰めた」(アムネスティ・インターナショナル)と、ライシ師の責任追及を求めた。

 イランをめぐっては現在、核合意の復活をめぐる交渉が進められている。合意は2015年に米英仏独中露の6カ国とイランの間で交わされ、イランの核開発を制限する一方で、制裁を解除した。

 18年にトランプ前大統領が合意から離脱し、制裁を再開したことにイランが反発。ウラン濃縮度を引き上げるなど核開発を再開させている。

 合意復活への交渉が進められているものの、イランは制裁の全面解除を求め、交渉は行き詰まっている。交渉に間接的に参加している米政府は、イランの核開発制限期間の延長、ミサイル開発への制限を核合意に追加することを求めているとみられているものの、イランが受け入れる可能性は低い。

 すでにイランは、核開発を再開しており、交渉で有利な立場に立つとの指摘もある。米国としては、核開発の停止とともにミサイル開発の制限でどこまでイランに迫れるか、交渉の手腕が問われるところだ。

 ライシ師自身は、合意の復活に反対しない意向を明らかにしている。当面の関心事は、経済だ。トランプ政権による制裁再開で、イラン経済は困窮を極めている。また、最高指導者が実権を握るイスラム法学者支配体制に対する国民の反発も強まっている。過去最低の投票率がそれを物語っており、体制の威信を取り戻すためにも、国民生活の向上は待ったなしの課題だ。

 イランはイラク、シリアに民兵を派遣し、イエメンでは反体制派を支援するなど影響力を強め、地域の不安定化を招いてきた。また、パレスチナのイスラム組織ハマスに対する支援は、パレスチナ和平にも影を落としており、これらの問題への対処も必要だ。

 米国は中東からの兵力引き揚げを進めている。台頭する中国への対抗が一因だ。中東が不安定化に向かえば、その戦略も頓挫することになりかねない。対中戦略上もイランとの関係改善は重要だ。

 日本は影響力行使を

 日本は伝統的にイランとの良好な関係を維持してきた。日本にとって中国封じ込めは喫緊の課題であり、イランにおける保守強硬派への政権交代が中東の不安定化につながらないよう影響力を行使すべきだ。