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イスラエルの西岸併合計画 ハマス「実行なら宣戦布告」


 5月に発足したイスラエル政権による、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地とヨルダン渓谷を併合する計画をめぐる問題で、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム根本主義組織ハマスやイスラム聖戦は併合に反発し、武力闘争も辞さない構えだ。国際社会は、併合は国際法違反であり計画を中止するよう呼び掛けている。
(エルサレム・森田貴裕)

国連は「国際法違反」と警告
各国大使が参加し異例の反対集会も

ヨルダン川西岸のエリコ近くで6月27日、イスラエルによるヨルダン川西岸の一部併合計画に反対するデモを行うパレスチナ人とイスラエル人(UPI)

ヨルダン川西岸のエリコ近くで6月27日、イスラエルによるヨルダン川西岸の一部併合計画に反対するデモを行うパレスチナ人とイスラエル人(UPI)

 イスラエルとハマスはここ3カ月間、長期的な停戦協定の可能性について交渉を行っており、ガザ境界は静けさを維持していた。ハマスは、ガザ境界付近でのデモや暴動が発生する間もイスラム聖戦などのテロ組織を抑制してきた。しかし、イスラエルの併合計画に対し、ハマスとイスラム聖戦は抵抗を開始すると宣言。敵対しているパレスチナ自治政府を含めた他の武装組織と協力し、全域で反併合の取り組みを行うと表明した。

 イスラエル南部には、ガザ地区から爆発物や発火物を付けたバルーン群が飛来し、緊張が高まっていた。

 イスラエルは15日朝、バルーン攻撃の停止と引き換えに、カタールからの支援金5000万㌦のガザへの搬入を承認した。支援金は現金でイスラエルを経由し搬入される。

 バルーン攻撃は停止されたものの、ガザへの送金の遅れや、イスラエルの入植地併合計画への反発から、15日夜、ガザからイスラエル南部に向けてロケット弾が発射された。

 ガザからのロケット弾発射は1カ月以上ぶりで、イスラエル軍は報復として、ハマスの軍事施設への攻撃を行った。

 ヨルダン川西岸地区エリコ郊外のヨルダン渓谷で22日、パレスチナ自治政府主催により、イスラエルの併合計画に反対するパレスチナ人の大規模なデモ集会が行われた。1000人を超えるデモに参加した国連のムラデノフ中東和平特別調整官は、パレスチナ人に向けて「絶望してはいけない、国家を持つという夢を諦めないでほしい」と語った。EU代表、ロシア、中国、日本、ヨルダンの各国大使も演説を行ったという。各国の代表がパレスチナの領土で、イスラエル政策の反対集会に参加することは前例がなく、極めて異例だ。パレスチナの中東和平交渉責任者であるサエブ・アリカット氏は演説で、「自由と尊厳と正義の戦いにおいて、世界がわれわれと共にある。イスラエルと米国が直面しているのは国際法だと訴えてくれた」と語った。

 ムラデノフ氏は24日、オンラインでの国連安全保障理事会で、併合は「イスラエル・パレスチナ関係を取り返しがつかないほど変えてしまう」と警告。国連のグテレス事務総長は、「最も深刻な国際法違反となり、2国家解決の期待を著しく害し、和平交渉再開の可能性を損ねる。イスラエルに併合計画を中止するよう呼び掛ける」と語った。ベルギー、英国、エストニア、フランス、ドイツ、アイルランド、ノルウェーの欧州7カ国は共同声明を発表し、「国際法の下、われわれは併合を承認しない」と警告した。アラブ連盟のアブルゲイト事務局長は併合について、「将来のいかなる和平の見通しをも破壊し、同地域の安定を脅かすことになる」と警告した。

 一方、国際法違反と見なさないとする米トランプ政権のポンペオ国務長官は、「イスラエル人がこれらの地域に主権を拡大するという決断は、イスラエル人がなすべき決断だ」と述べた。

 ハマスは25日、「イスラエルが併合計画を実行に移した場合には、宣戦布告と見なす」と警告。26日夜には、ロケット弾2発がイスラエル南部に向けて発射された。コミュニティーには空襲サイレンが鳴り響き、住民はシェルターへの避難を余儀なくされた。直後、イスラエル軍は報復としてガザの標的を空爆した。