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北の制裁逃れ、国際社会は監視を緩めるな


 北朝鮮が国連安全保障理事会による制裁を逃れる形で日本を含む世界90カ国から車などを密輸していたとする報告書を米国の民間研究機関が発表した。北朝鮮は制裁回避へあらゆる抜け道を利用していることが浮き彫りになっており、その手法は年々巧妙化しているとも言われる。制裁が有名無実化しないよう国際社会はその実効性を確保すべきだ。

 外車800台を調達

 報告書によると、北朝鮮は2015年からの3年間に国連制裁で北朝鮮への輸出が一部禁止されている、日本車256台を含む約800台の外国製車などを調達した。

 2月にベトナムのハノイで行われた2回目の米朝首脳会談で金正恩朝鮮労働党委員長が乗っていた防弾仕様のドイツ製高級車の密輸ルートでは、貨物船の動きや衛星写真から経由地の一つに大阪もあったという。

 米国の国連代表部は先月、北朝鮮が海上で積み荷を別の船に積み替える瀬取りで国連安保理制裁決議の上限を超える石油精製品を密輸しているとの報告書を安保理の北朝鮮制裁委員会に提出した。さらに5月には、北朝鮮の貨物船「ワイズ・オネスト」が制裁に違反して同国産石炭を輸送したとして米国に差し押さえられた。

 北朝鮮が密輸や瀬取りを繰り返すのは国連制裁で国内経済が打撃を受けているからだ。専門家らは17年に採択された一連の国連制裁決議が、北朝鮮の外貨収入を断つ最も効果的なものだとみている。特に重要な収入源となっていた石炭や鉄鋼石、海産物などの輸出が遮断され、体制を支える党や軍に回す資金が不足し始めたとされる。

 北朝鮮は密輸や瀬取りでは不十分なので制裁そのものを解除させることにも必死だ。正恩氏がトランプ米大統領との首脳会談開催に固執するのも、制裁による打撃を憂慮し、制裁解除に道筋を付けたいという切迫感の裏返しだろう。

 昨年から今年にかけて米朝や南北の首脳会談が繰り返されたが、北朝鮮が本気で非核化に向かう意志はいまだに確認できていない。合意に盛り込まれた非核化という言葉とは裏腹に、むしろ核開発は継続されている。この状況が続く限り、国際社会は密輸や瀬取りに対する監視を緩めるわけにはいくまい。

 正恩氏は中国の習近平国家主席と何度も会い、ロシアのプーチン大統領とも首脳会談を行った。北朝鮮の体制崩壊を望まないとされる両国が制裁逃れを見て見ぬふりをしたり、手を貸したりすることがないよう常に促し続けることも必要だ。

 心配なのは北朝鮮との融和に前のめりになっている韓国・文在寅政権が制裁逃れにどこまで厳しく対処できるかだ。文大統領は正恩氏から中断している金剛山観光と開城工業団地の操業を再開させるよう事実上の圧力も受けている。南北融和を理由に制裁緩和を進めても「核保有の北朝鮮」を延命させるだけだ。

 国内の活動にも注意を

 日本も密輸経由地になっていたという事実は重く受け止めなければならない。北朝鮮に融和的な国内の組織や団体の活動に注意を払う必要がある。