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米朝首脳、板門店で3回目会談


実務者協議再開で合意
ホワイトハウスに正恩氏招請

韓国を訪問したトランプ米大統領は30日、南北軍事境界線にある板門店の韓国側施設「自由の家」で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と約50分にわたり会談し、北朝鮮の非核化やその見返りとなる米国の対北制裁緩和などをめぐり今後2、3週間以内に米朝間の実務者協議を再開することで合意した。トランプ氏は金正恩氏をワシントンのホワイトハウスに招請した。会談に先立ち、同行した韓国の文在寅大統領を含む米朝韓の3首脳が短時間ながら初めて一堂に会し対話した。両首脳の会談は3回目で、決裂に終わった2月のベトナム・ハノイ会談以来、約4カ月ぶり。

トランプ米大統領(左)と金正恩朝鮮労働党委員長

30日、板門店の南北軍事境界線の韓国側で、握手するトランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(EPA時事)

 トランプ氏は会談後、記者団に「包括的な交渉と合意をすることで一致した」と述べた。また「今後2、3週間以内に両国で実務チームを構成し交渉を開始するだろう」とし、ポンペオ国務長官の主導の下でビーガン北朝鮮担当特別代表が代表になると明らかにした。交渉については「急ぐ必要はない。急ぐと失敗する」とも語った。

 正恩氏は会談冒頭、「北と南の間では分断の象徴であり、悪い過去を彷彿(ほうふつ)とさせる場所で長い間、敵対関係だった両国が平和の握手をすること自体が昨日とは違う今日を表現するもの」とし、トランプ氏との「素晴らしい関係」が「難関と障害を克服する神秘的な力になる」と語った。

 会談内容の詳細は明らかになっていないが、制裁緩和に慎重な米国と核放棄の意志が見られない北朝鮮との溝は深く、突っ込んだ話し合いには至らなかったもよう。トランプ氏はひとまず北朝鮮と対話ムードを維持することを重視、また正恩氏は制裁緩和へトップダウンの決断を引き出す糸口を見いだそうとトランプ氏に会いに来たとみられる。

 今回の会談は29日、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)出席のため大阪に滞在していたトランプ氏が自身のツイッターで正恩氏に呼び掛け、急遽(きゅうきょ)行われたとみられるビーガン氏と北朝鮮の崔善姫第1外務次官による協議を経て正恩氏が決断して実現した。

 板門店には米国側からクシュナー大統領上級顧問と妻でトランプ氏の娘のイバンカ大統領補佐官、ポンペオ長官らが随行。北朝鮮側は正恩氏の妹の与正氏、李容浩外相、李昌善書記室長らの姿が見られた。

 トランプ氏は会談前、板門店の軍事境界線を挟んで正恩氏と握手を交わした後、一時、北朝鮮側に足を踏み入れた。米大統領が北朝鮮の地を踏むのは初めてだ。

(ソウル 上田勇実)

同床異夢続く米朝

解説

 トランプ氏が前日に急に思い立ったという3回目の米朝首脳会談はほとんど準備する間もなく開催され、あっと言う間に終わった。案の定、実務協議再開で合意するのが精いっぱいで実質的成果はなく、またしてもトランプ氏と金正恩氏のパフォーマンスが目立った。

 一部で米朝対立の象徴とも言える南北軍事境界線上の板門店で両首脳が握手し「平和」を語ったこと、米大統領として初めて北朝鮮の地を踏んだことが「歴史的」と持ち上げられている。だが、3回の会談をもってしても肝心の北朝鮮非核化の行方は全く見通せないままだ。非核化を迫りたいトランプ氏と制裁緩和を引き出したい金正恩氏の会談は依然として同床異夢だ。

 トランプ氏は正恩氏が核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を自制していることを自らの外交成果とアピールしてきた。今回の会談で正恩氏をホワイトハウスに招請したのも来年の大統領選再選へ対話維持はプラス材料になると判断しているためだろう。

 そんなトランプ氏に期待を掛けているのが正恩氏だ。北朝鮮国内は国際社会の制裁長期化で体制を支える党や軍の経済が大きな打撃を受け始めているといわれる。正恩氏がトランプ氏の会談提案に即応じたのはそうした事情を抱える焦りからなのかもしれない。

 このところ周辺国外交で行き詰まっていた韓国の文在寅政権は今回、再び米朝の仲裁役として浮上し活気を取り戻しているようだが、トランプ氏は文大統領に米朝会談仲裁という花を持たせる代わりに、これ以上、日本との関係を悪化させず日米韓3カ国連携の枠組みに残るよう迫ったのではないかとの見方も出ている。米中覇権争いの狭間で中国配慮に傾きつつあった文政権としては難しい舵(かじ)取りを迫られそうだ。

(ソウル・上田勇実)