世界日報 Web版

北ウラン濃縮、揺さぶり戦術は通用しない


 北朝鮮が寧辺にある核施設でウラン濃縮を継続している可能性が高いという分析結果を米国の研究サイトが発表した。米朝首脳が非核化を約束したシンガポールでの初会談から間もなく1年が過ぎようとしているが、北朝鮮は非核化に向けた国際社会の期待を裏切り続けている。極めて遺憾だ。

狙いは米の制裁解除

 同サイトは商業衛星から撮影した車両や作業員の動きなどに基づき、施設でウラン濃縮に必要な液体窒素が定期的に運び込まれている可能性があると指摘した。濃縮レベルまでは突き止められなかったとしているが、核兵器用に濃縮ウランを製造しているのは間違いなさそうだ。

 決裂に終わったベトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談で北朝鮮は同施設の永久廃棄を提案していた。当時、北朝鮮は「米国が千載一遇のチャンスを逃した」とし、決裂の責任を全面的に米国側に押し付けた。

 今回のウラン濃縮は、米国が完全非核化まで制裁解除に一切応じない方針を転換させないのであれば、再び核開発を本格化させるという、いわばあてつけだ。全く身勝手な態度である。

 同サイトの発表に先立って北朝鮮外務省は談話を発表し、「米国は今のやり方を変え、一日も早くわれわれの要求に応える方がいい。われわれの忍耐にも限界がある」と述べた。「忍耐の限界」に言及することで米国を揺さぶる狙いがあるようだ。

 北朝鮮は先月、国連制裁決議違反である短距離弾道ミサイルを相次ぎ発射した。非核化や朝鮮半島の平和体制構築の精神に反する動きを続けるのも揺さぶりの一環であろう。

 だが、米国がこれまで非核化意志を一向に見せなかった北朝鮮を信じて制裁解除に応じる可能性は極めて低い。北朝鮮としてはトランプ米大統領が再選を目指す大統領選のある来年になる前に、制裁解除や体制保証に道筋を付けたいはずだが、非核化と制裁解除などをめぐる双方の隔たりは大きい。

 米朝対話の橋渡し役を自任した韓国の文在寅政権も、会談決裂で米朝双方から不信を買う結果を招いた。それまでの南北融和が嘘(うそ)のように北朝鮮は韓国の呼び掛けに応じなくなった。

 仮に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が「忍耐の限界」に達した場合、再び核実験や弾道ミサイル発射に舵(かじ)を切る恐れがあるが、そうなれば米国をはじめ国際社会から一層の反発を招き孤立を深めるだけだ。北朝鮮は揺さぶり戦術が通用する状況ではないことを悟るべきだろう。

 トランプ氏は正恩氏と「適切な時期に会うのを楽しみにしている」とし、3回目の首脳会談に改めて意欲を示した。だが、非核化などに向けた北朝鮮の具体的な措置がなければ前回会談と同様に合意に達するのは難しいだろう。

日朝会談には注意払え

 安倍晋三首相は拉致問題の解決を念頭に前提条件なしでの日朝首脳会談の開催に重ねて意欲を示したが、北朝鮮は歴史問題の清算が先決だと主張している。制裁解除の糸口をつかみたい北朝鮮に誤ったシグナルを送らないよう注意を払いながら対話を進めてほしい。