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メディア対応に表れた“権威主義”


韓国紙セゲイルボ

政権批判を「売国」とする共に民主党

 スポーツの国家代表チームを取材する時、記者であっても自国チームの勝利を願うが、常に応援するわけではない。代表チームがふがいない時はしっかり指摘するのが記者の本分だ。それが売国だろうか。

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支持率急落の文寅在・韓国大統領が24日に大邱の市場を訪問した際、 過剰警護との批判を招いた、自動小銃を手にする私服の警護員とみられる人物(「正しい未来党」河泰慶議員のフェイスブックより・時事)

 最近、韓国政界では愛国記事・売国記事で論争が熱い。昨年9月、米ブルームバーグ通信は記事の題名に「文在寅大統領は国連で金正恩委員長の首席スポークスマンの役割をしている」という記事を出したが、当初から批判があったこの記事は、自由韓国党の羅卿瑗院内代表が最近、国会の代表演説でもう一度引用して政争の真っただ中に置かれた。与党の共に民主党は、「米通信社の皮を被って国家元首を侮辱した売国に等しい内容」と批判。さらに翌日、文大統領を“金正恩のエージェント”と書いた米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の韓国人記者まで「黒い頭をした外国メディア」と皮肉った。

 論評した報道担当者が一部過剰な表現を謝罪し一段落したが、物足りなさは依然として残る。民主党が批判したNYTの韓国人記者は1999年、AP通信記者だった時、韓国動乱当時、米軍らによって民間人が虐殺された「老斤里事件」を1年かけて取材。記事を通じて、その事件と半世紀を超える犠牲者・遺族の苦痛を国内外に知らせた。同記者はこの記事によって米国で最も権威あるピューリッツァー賞の初の韓国人受賞者となった

 この他にも、外国メディアで働く韓国人記者は韓国現代史の主要な事件で足跡を残している。1987年6月9日、催涙弾に当たって頭から血を流している李韓烈烈士(当時延世大学生)の姿をとらえたのはロイター通信の韓国人カメラマンだった。この写真は「6月抗争」(大統領直接選挙制など実現させた87年の民主化闘争)の起爆剤になった。

 メディアはそもそも権力を批判的に眺める。このためにトランプ米大統領も自国の一部メディアと関係がよくない。しかし弾圧の中でも屈しないのが記者魂だ。称賛や応援は政府の広報ネットで十分だ。インターネット交流サイト(SNS)の発達で、政権と国民が直接やりとりする時代ではあるが、誤りを自ら認めて、先に知らせる権力集団など殆どない。そこにメディアの役割がある。

 記事について愛国と売国に分ける基準は何だろうか。報道機関は各自編集方針がある。会社・記者ごとに見解は違うが、結局、国家や社会がより良い方向に向かうよう願う心で書くのは同じだ。自分の側でなければみな売国だろうか。

 メディアの権力批判は容易(たやす)いことではない。最近会ったソウル駐在のある外信記者は、「それでも今度の政府は朴槿恵政府と違って、外信記者(産経新聞加藤達也支局長)を告訴してはいない。その点だけでも感謝しなければならないのかもしれない」といって苦笑した。

 民主主義を最高の価値とする、共に民主党がメディアの批判的見解に“売国”とまで表現することは、過去の権威主義政権の態度を踏襲しているようで心配だ。

(3月22日付、崔ヒョンチャン政治部記者)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。