世界日報 Web版

権力の正統性維持に必要な核


北朝鮮核の脅威

アンジェロ州立大学教授 ブルース・ベクトル氏

拡散防止へ監視と制裁必要

 北朝鮮からこのところ、非常に挑発的な発言が飛び出している。これが原因となって、孤立した北朝鮮が今後受けられる支援に水を差す可能性がある。しかし、2016年1月以降の北朝鮮の行動は、それ以上に問題だ。1月に地下核実験を成功させた。米本土に到達可能な3段の弾道ミサイルの発射を成功させた。北朝鮮は「衛星」と主張している。これらは、挑発行為の始まりにすぎない。

ブルース・ベクトル氏

 ブルース・ベクトル 米アンジェロ州立大学(テキサス州)政治科学教授。北朝鮮に関する6冊の書籍を執筆・編集。最新の著書は『金正恩時代の北朝鮮と地域の安全保障:国際安全保障の新たなジレンマ(仮訳)』。

 評論家らは、北朝鮮は長距離弾道ミサイルに必要な3段階すべてを完成させてはいないはずだとずっと主張してきたが、北朝鮮は今、それに答えを出した。弾頭を小型化しミサイル搭載を可能にした。発射前に米国の早期警戒システムに探知されない移動式ミサイルの開発はほぼ完成したようだ。目標に向かって、燃え尽きることなく大気圏に突入できる再突入体の試験が行われ、その写真が公開された。

 北朝鮮は3月9日、路上移動式の長距離弾道ミサイル、KN08用の核弾頭を公開した。そればかりか、弾頭がミサイルの再突入体に取り付けられる箇所もカラー写真で公開した。3月15日には、別の場所でKN08の大気圏再突入体の実験を行った。公開された写真を見る限り、実験は実際に行われ、成功した。国防総省と情報機関でほぼ2年間にわたって評価が行われた結果、北朝鮮は、米国を攻撃可能な移動式の長距離核搭載ミサイルを保有しているとみられている。さらに、少なくとも1度公表されたように、ミサイルには、標的に到達する過程で大気圏での熱に耐えられるとみられる再突入体を備えている。これを確認する情報はないものの、極秘の情報収集に通じ、情報源に接触可能な人物らが、少なくとも1年半前に開発状況についてすでに知っていた可能性がある。北朝鮮はかつてないほどの脅威となる兵器を製造することに成功したと説得力のある説明(今では部分的にだが立証されている)をしたのはそのためだった可能性がある。

 北朝鮮がなぜ、核兵器開発計画を進め、宣伝し、ミサイルKN08を運搬する手段を開発したのかを解明するには、まず、権力を行使する組織について知ることが重要だ。

 この国では、真の権力を握る組織が、大きく分けて三つある。党、軍、治安部隊だ。金正恩氏はそのどこでもまだ、支配を完全には確立していないようだが、軍の将校の多くを粛清し、そのため、軍内での支持を得るために何らかの対応が必要になっている。これは、ジョージタウン大学のデービッド・マクスウェル教授の言う「金一族支配体制」(KFR)の信頼性をめぐる世襲の問題でもある。金日成氏が核開発計画を開始し、息子の金正日氏がそれを引き継ぎ、3代目の金正恩氏がかつてないほどの脅威となるレベルにまで引き上げた。その結果、核計画とその運搬手段は、KFRが握る権力の信頼性の源となり、最終的には、現体制を維持し、守る権力機関の信頼性の獲得にも貢献する。

 しかし、北朝鮮が核開発を進める背景には、単に国内の権力の正統性の維持、権力の継承、外部からの攻撃の抑止以外の目的もある。北朝鮮は、イランと非常に長い間、有益な関係を築いてきた。どれほど友好なのだろうか。イスラエルのフィッシャー航空宇宙研究所の研究員タル・インバル氏は、「きょう北朝鮮で見られることは、あすイランで見られる」と指摘した。この状態は30年以上続いている。イランは、北朝鮮が製造したすべての液体燃料ミサイルを保有している。スカッドの派生型、ノドン、ムスダン、さらにはテポドンの技術も手に入れた。そればかりか、北朝鮮が2003年以降、イランの核開発を支援してきた証拠が数多く出ている。少なくとも、地下施設の建設、原材料の供給、核弾頭技術開発の支援などが実施されている。そのため、KN08とミサイル搭載核弾頭技術がイランに渡る可能性は非常に高く、巨額の資金が北朝鮮に渡る。恐らく数十億㌦という規模になる。これは米国にとってどのような意味を持つのか。北朝鮮が米西海岸を標的にでき、イランがミサイルと核弾頭を手に入れれば、米東海岸を標的にできるということだ。このような懸念に対する疑念はあるだろうが、北朝鮮がこれまで、売れる相手には、誰であれ、何であれちゅうちょなく売ってきたことを忘れてはならない。長距離弾道ミサイル、核技術も売ってきた。

 北朝鮮の目的は単純だ。核兵器も長距離弾道ミサイルも手放す気はない。その理由ははっきりしている。①金正恩氏は、政権の正統性を維持するためにこれらの兵器を必要としている②これらの兵器で、北朝鮮が喉から手が出るほど欲しい巨額の資金を手にできる。今後、金正恩氏とその周辺の権力エリートに圧力をかけ、これらの兵器が中東に渡らない-可能ならの話だが-ようにするためには、大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)を強化し、北朝鮮が大量破壊兵器を売却するために欠かせない、汚れた資金や資産を扱うダミー会社、銀行を追及する制裁の実行が必要だ。このような状況から、事態はかつてないほど差し迫っている。

 (この記事は、米紙ワシントン・タイムズに3月31日に掲載された特集「北朝鮮の核の脅威-評価、世界の反応と解決」に寄稿されたものです)