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デモ隊は何のために決起したか


韓国紙セゲイルボ

目的より暴力性浮き彫りに

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14日、ソウル中心街で行われた政権退陣デモで暴徒化した参加者に放水で防戦する警察(上田勇実撮影)

 「傘!」。民衆総決起があった14日午後、前線で警察と対峙(たいじ)していたある参加者が記者を見て大声を張り上げた。

 思わず差していた雨傘を渡すと、彼はそれを槍のようにして警察車両の壁に突進した。風車に立ち向かうドン・キホーテが思い浮かんだ。しかし、風車の前で無力だったドン・キホーテの槍とは違い、傘は攻守両面で有用な道具として活用された。

 その参加者は記者の傘で警察バスの窓を刺したり、傘を開いて、警察の催涙剤噴射を防いだりした。だが、そこまでだった。高圧放水砲が登場すると、傘は即座に無用の長物となった。

 暗くなると、傘と催涙剤噴射器の対立は、鉄パイプと高圧放水砲の対立に変わっていた。警察の放水砲発射も、警察車両を綱で縛って車壁を崩そうとするデモ隊のやり方も初めてではなかった。

 だが、この日は双方とも度が行き過ぎていたということを現場で全身で感じることができた。高圧放水砲に混ざった催涙剤の濃度がそうだ。ノートPCが濡れるのをかばい、デモ隊が捨てた合羽をあたふたと拾って着た。

 ズボンを伝った水が運動靴の中に溜まり、足の甲が痛くて歩くのが難しいほどになった。催涙剤による弱い火傷だった。耐えることができず、近隣のサウナに“逃避”した。

 再び街に出ると、今度はデモ隊のたいまつが登場していた。警察バス数台がデモ隊の攻撃を受けて車壁の一部が崩れていた。あちこちで鉄パイプとレンガが乱舞した。

 深夜零時が近づいた。デモを主導した指導部がいなくなると雰囲気は急速に冷めていった。清掃車両が出てきて、市庁の前から光化門交差点まで清掃し始めた。

 翌日、報道機関とインターネットなどを埋め尽くしたのは「暴力」2文字だけだ。警察への批判であれ、デモ隊へのそれであれ、ひたすら焦点は暴力性だけが取り上げられた。

 虚(むな)しかった。結局残ったのは何だったのか。数万人のデモ隊がさまざまなスローガンを叫んだが、猛烈な対立の中で本来デモ隊が投げかけたメッセージには触れられなかった。

 国語辞典には決起を「ある目的を成し遂げるために、心をかきたてて気勢を発して力強く起きること」と定義している。目的より暴力性だけが浮び上がった決起ならば、何のための「民衆総決起」だったのか。

(李佑中(イウジュン)社会部記者、11月17日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。