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北ミサイル 敵基地攻撃能力を保持せよ


11、12両日に北朝鮮の国防科学院が行った新型長距離巡航ミサイルの発射実験(朝鮮通信・時事)

 北朝鮮が新型長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと朝鮮中央通信が報じた。北朝鮮がミサイルの発射を公表したのは、今年3月に日本海に向けて短距離弾道ミサイルを発射して以来のことである。

 北朝鮮は8月に韓国で行われた米韓合同軍事演習に強く反発し、対抗措置の可能性をにおわせていた。また韓国が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験に成功したことに刺激を受けたとも考えられるが、基本的には米国を意識しての発射とみるべきであろう。

 対米交渉再開を狙う

 対中政策やアフガニスタン問題への対応に追われていることもあり、バイデン米政権における北朝鮮政策の優先順位は必ずしも高くない。他方、新型コロナウイルス禍や経済不振で苦境に立つ北朝鮮の金正恩政権は、経済制裁の解除や援助獲得を目的に対米交渉の早期再開を望んでいる。

 そのため米国を刺激する恐れが強い長距離弾道ミサイルは封印する一方、与える脅威の低い巡航ミサイルの発射によってその関心を引きつけ、米国を交渉のテーブルに着かせようとの北朝鮮の意図がうかがえる。日本海に向けて射程の短い弾道ミサイル2発を発射したのも、同じ狙いからの行動と言えよう。

 今回の実験で巡航ミサイルは約2時間飛翔し、1500㌔先の目標に命中したと北朝鮮は発表している。事実だとすれば、エンジンや誘導・制御システムなど相当高い技術を保持していることが推察される。弾道ミサイルとは違い、巡航ミサイルは国連安全保障理事会が北朝鮮に発射を禁止している対象には含まれない。

 しかし、低高度で飛翔する巡航ミサイルは探知が難しい。また1500㌔の飛翔距離を持つとすれば、日本列島全体がほぼその射程内に含まれる。わが国の政治中枢や都市、重要な社会インフラ、さらに自衛隊や在日米軍の基地も攻撃目標となり、大きな脅威である。さらに北朝鮮は巡航ミサイルを「戦略兵器」と規定しており、通常弾頭だけでなく小型核弾頭の搭載も視野に入れているとすれば、その脅威はさらに増大する。

 加藤勝信官房長官は「日本を取り巻く地域の平和と安全を脅かすものだ」として、北朝鮮の巡航ミサイル開発などについて分析を進める考えを表明。日米韓3カ国の北朝鮮問題担当実務者協議でもこの問題が取り上げられ、対話と制裁を通じて北朝鮮の非核化を目指す方針が再確認された。米国の出方次第では、北朝鮮がSLBMの発射実験に踏み切る可能性もあり、一層の注意と警戒が必要だ。

 専守防衛原則の見直しも

 北朝鮮は1月の朝鮮労働党大会で「国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画」を示し、今月の閲兵式でも「戦争抑止力目標の達成」を強調。今後も核・ミサイル開発を強化していくことが予想される。

 北朝鮮の脅威の増大に対処するには、弾道ミサイル防衛システムの整備にとどまらず、検討課題となっている敵基地攻撃能力の保持を自衛隊に認めるとともに、専守防衛原則を見直すことも必要である。