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尹錫悦・大統領選候補の成功条件


韓国紙セゲイルボ

最初の関門は道徳性検証

 来年3月に行われる21代大統領選挙に与党「共に民主党」は9人、野党「国民の力」は13人の候補者が出馬の意向を示し、各政党は候補者選びを興行させて支持率を上げようと全力をふりしぼっている。

 こうした中、野党側の有力候補である尹錫悦(ユンソンニョル)前検事総長が過酷な検証攻勢を突破できるかが核心イシューとして浮上している。現時点で尹候補の成功を左右する核心争点が何か、汝矣島(ヨイド)(政界)の外の視点で診断してみる。

来年の韓国大統領選への出馬を表明した尹錫悅氏(韓国紙セゲイルボ提供)

来年の韓国大統領選への出馬を表明した尹錫悅氏(韓国紙セゲイルボ提供)

 最も重要な最初の関門は“道徳性検証”を通過することだ。義母の医療法違反などに対する1審有罪判決が起こす波紋をすぐには予想しにくいが、今後、過酷な過程が展開するものと見られる。

 尹候補が「法適用に例外なし」と述べ、李俊錫(イジュンソク)国民の力代表が「韓国は連座制がない国」と一応防御したが、今後、検察時代の「オプティマス資産運用詐欺事件の手抜き捜査疑惑」「ユンデジン検事長実兄収賄事件もみ消し疑惑」、そして夫人に対する無差別的な疑惑攻勢とが重なって、どのように進むのか憂慮が大きい。

 成功のための2番目の条件は“大統領・尹錫悦”のイメージを構築することだ。辞職してわずか4カ月、まだ“検事総長・尹錫悦”のイメージがとても強い。出馬宣言文で「法治と正義に基づいた自由民主主義」を掲げたが、政治家として「大統領候補・尹錫悦」のイメージ構築には成功しなかった。国民が望む大統領は被疑者を懲罰する審判者でなく、すべての人を包容して統合す尊敬される国家の長老というイメージを刻印しなければならない。

 また別の緊急な課題は尹候補だけの“政策ブランド”を作ることだ。これまで高かった支持率は現政権に対する審判と政権交代への有権者の大きな熱望が反映されたものだ。しかし、それらだけでキャンペーンを完走して最終的に勝利することは難しい。国政運営のビジョンと価値実現のために掲げる代表的な政策が必要だ。

 四つ目の条件は一般国民との“疎通能力”だ。最も簡単そうだが、最も難しい尹候補のアキレス腱(けん)になる可能性が高い。彼はこれまで検事として生きてきたので、垂直的な上司の命令に従う検察文化に慣れていて、他人との水平的な対話と討論にどれくらい開かれた心を持てるか、憂慮されるのは否めない事実だ。

 なぜ尹錫悦が大統領にならなければならないのか、まだはっきりした返事は聞こえない。事実、文在寅(ムンジェイン)政権審判と保守の政権奪還は尹錫悦でなくても可能だ。政界の都合でない、一般国民がスッキリと納得できる“なぜ尹錫悦大統領か”という質問に対する明快な返事が出てきてこそ、大統領選挙での勝利が可能だろう。

(尹鍾彬(ユンジョンビン)明知大教授政治学、7月5日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

尹氏一本で野党は戦えるか

 本戦まで8カ月あるというのに早くも過熱気味の韓国大統領選だ。「積弊清算」「南北関係膠着」「対日関係最悪化」「自分がやればロマンス、他人がやれば不倫」のご都合主義、経済政策の失敗、これらに辟易した韓国民は文在寅政権に幕を下ろしたい。

 その期待を集めているのが尹錫悦前検事総長。これまでは人気が先行していた。しかし、国会議員でもなく、政党にも属さない、政治経験ゼロの経歴は不安を抱かせるに十分だし、出馬声明をしたものの、政権構想や政策は輪郭すら見えない。

 記事ではこうした尹氏の課題を挙げ、対処克服すれば成功する(当選する)と、一応応援の形をとっているが、裏を返せば、尹氏の政治家、大統領としての資質に強い疑問をぶつけているという本音が透けている。

 大統領には統治力が求められ、実際の行政は官僚が行う、という権力構造を日本人としては想像するが、「帝王型大統領」と言われ権力が集中している韓国では、「王」の一言には「ごもっとも」と絶対服従で、目くばせ、咳払いでも「臣下」たちは忖度を働かせる。王が英明ならばいいが、明君は少なかったというのがこの国の歴史である。

 唯一分かっているのが尹氏が法曹だということだ。「憲法の上に国民情緒法がある」と言われる韓国で「法治主義」を守れるのか。記事でも「法適用に例外なし」の尹氏の言葉を引用し、義母の有罪判決にどう向き合うかに注目している。まずここで国民の納得が得られなければ、早々にレースから脱落する可能性もある。

 こうしたリスクの大きい候補に頼り切る野党だとすれば、大統領選勝利も危うい。与党には“隠し玉”がある。現在係争中の金慶洙(キムギョンス)慶尚南道知事だ。来週、最高裁で無罪が出れば、一気にトップに躍り出るだろう。徴用工判決が下級裁でひっくり返ったように、今度も司法は「王」の顔色を見るのか。

(岩崎 哲)