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国らしい国の希望は消え、民の怨嗟溢れる


韓国紙セゲイルボ

自賛だけの大統領に『懲泌録』

 壬辰倭乱(文禄の役)の戦時内閣を率いた柳成龍(リュソンニョン)は戦後「懲毖録(ちょうひろく)」を書いた。懲毖は「私の過去の過ちを反省し後患のないように慎む」という意味だ。約400年前と同じく大韓民国は柱が腐り屋根は雨漏りしている。

韓国の秋美愛法相(当時)(EPA時事)

韓国の秋美愛法相(当時)2020年7月22日、ソウル(EPA時事)

 民の怨嗟が既に川をなしているが、文在寅(ムンジェイン)大統領の就任4周年演説に自省はなく自賛だけが溢(あふ)れている。柳成龍の気持ちで懲毖の筆をとる。任期1年未満の文大統領と後任の大統領たちに警戒の鏡とするためだ。

 殿下(文大統領)、2017年の反正(正しい政治に戻す)を記憶されていますか。秘線の専横に驚いた国民がろうそくを持って光化門に雲集しました。小臣(筆者)をはじめすべての民の願いはひたすら「国らしい国」でした。殿下が即位式で「これが国か」という問いで始めると誓ったのはそのためでしょう。殿下の恩限りなき綸言に国民は歓呼雀躍いたしました。

 しかるに「これが国か」というその日の嘆きが民の口からまた出てきております。いま国に疫病が蔓延(まんえん)し民の生活は日増しに困窮しております。塗炭の苦しみに陥った民を救おうと朝廷で糧穀を放出しておりますが、火急なことは糧穀でなく民の心を慰めることです。

 殿下は分裂の政治を終わらせると仰せられながら、自ら分裂の広場に入っておられます。「機会は平等、過程は公正、結果は正義となる」と言われた殿下の国で尹美香(ユンミヒャン)、秋美愛(チュミエ)、公務員不正が続いています。

 不正と正義が逆転する今日の事態は元法務大臣曺国(チョグク)から始まりました。殿下はその家族の不正をかばい、辞任する曺国に「心の借りを負った」と悲しまれました。君主は民の父母です。どうして不正の大臣だけが目に浮かび、罪なき民の涙は見えないのでしょうか。

 殿下は「韓国は小さい国、中国は大きい峰」と言って、中国を高め、わが国の品格は地に落とされました。事大外交の表象である迎恩門を壊して独立門を建てた1897年の歴史を忘れられましたか。使臣・盧英敏(ノヨンミン)(元駐中大使)は中国王(習近平)に謁見し、芳名録に「萬折必東」と書きました。「黄河の水はいくら曲がりくねっても必ず東に流れる」(「中国王に忠誠を誓う」の意)として中国にひれ伏しましたが、そんな愚かな者を都承旨(トスンジ)(秘書室長のこと)に抜擢した方がまさに殿下でいらっしゃいます。

 殿下は北の蛮夷の輩にも腰をかがめられます。彼らが「茹でた牛の頭」などと妄言を繰り返しても忍耐の美徳を発揮されます。外敵のあまりにも酷い無礼は限りなく包容しながら、わが民の小さな批判は棍杖と鉄槌で治められるのでしょうか。

 殿下、君主が船なら民は水でございます。水は船を浮かべますが、転覆させることもできます。4年前の反正の教訓を忘れないで下さい。どうか民の意を奉じて善政を施されますように。

(裵然國(ペヨングク)論説委員、5月25日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

文政権にも「愛想が尽きた」

 一言で言えば、「愛想が尽きた」ということだろう。期待と希望の中で登壇した文在寅大統領だったが、ふたを開けてみれば、極端な身内贔屓(ひいき)と「従北親中」の弱腰外交、それに理念先行現実無視の経済政策、コロナ対策でも「K防疫」を誇ったことが恥ずかしくなるような現状で、残り任期1年を切って「民」も見放したというところだ。

 身内贔屓で説明すれば、尹美香は言わずと知れた「慰安婦」を踏み台に国会議員になったと言われている人物である。何より日韓関係をここまで悪くした元凶といっていい。秋愛美は無謀にも検察総長(検事総長)潰(つぶ)しで力負けし、息子の兵役不正を庇った過保護ママ。盧英敏は仕える相手を間違った外交官からその後秘書室長(官房長官)になったが“前科”のためか最近辞任した。

 このほかにも錚々(そうそう)たるタレントが顔を揃(そろ)えている。文人事の綻びは盟友曺国の起用と転落から始まった。「国らしい国」にすると約束しながら、政権は昔と変わらず不正の温床、特権行使と家族不正がまかり通る。韓国では「入試、兵役、不動産」の不正は絶対に許されない。不正のない清潔な政府を期待したものの、文政権もこれにまみれていた。

 不動産不正が決定打となって、政権支持率は転落、ソウル・釜山市長選の惨敗は民の怒りがどれほど大きいかを示した。

 韓国は「反正」という言葉をよく使う。「正しい状態にかえす」ということで、政治用語である。日本には「交代」はあるが「反正」はない。「正」という基準があるから「不正」が際立つ。「不正」のレッテルが貼られたも同然の文政権の後には「反正」が繰り返されることになる。

(岩崎 哲)