韓国2大市長補選で与党惨敗、文政権の「偽善」 民心が審判


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 韓国で7日投開票した首都ソウルと第2都市・釜山の市長補欠選挙は事実上の保革一騎打ちとなり、いずれも左派系の与党「共に民主党」が惨敗を喫した。「偽善」と評された文在寅政権の失政を有権者が「憤りの投票」(保守系の最大野党「国民の力」関係者)で審判した形。勝利した保守派は来年3月の大統領選へ弾みをつけた。
(編集委員・上田勇実)

保守派 来年大統領選へ弾み
対日政策「漂流」も

 「これで韓国政治の潮目が大きく変わるかもしれない」

韓国の文在寅大統領=1月21日、ソウル(EPA時事)

韓国の文在寅大統領=1月21日、ソウル(EPA時事)

 与党惨敗を受け、韓国大手シンクタンクのある幹部はこう指摘した。文政権発足(2017年)以降に実施された統一地方選(18年)や総選挙(20年)など主要選挙で与党は圧勝し続けていたが、今回初めて真逆の結果を突き付けられたからだ。

 両補選は大統領選の前哨戦と位置付けられていただけに、朴槿恵前大統領の弾劾以来、「積弊」とレッテルを貼られ、萎縮していた保守派にとっては政権奪還に向け息を吹き返したと言える。

 与党が敗北した原因は「公正」「正義」を売りにしていた文政権で次々と不正疑惑が明るみになり、国民の反政府感情が強まっていたことにある。

 特に先月、韓国土地住宅公社(LH)職員らによるインサイダー取引が告発されたのに続き、文氏側近の一人である金尚祖・青瓦台(大統領府)政策室長が不動産価格抑制の関連法が施行される直前に自身が所有する不動産の価格を駆け込みで引き上げていたことが報じられ、これが火に油を注いだ。

尹錫悦氏(EPA時事)

尹錫悦氏(EPA時事)

 これまで内政・外交ともに失態が目立った文政権だが、岩盤支持層である南西部の全羅道やリベラル色の濃い40代が下支えした。だが、今回の選挙では庶民が最も敏感に反応を示す不動産投機問題で反感を買い、無党派層はもとより一部支持層の離反もあったようだ。

 今後の焦点は大統領選に移る。今回の選挙で勝った「国民の力」は依然として有力候補を欠いたままだが、文政権の不正疑惑に捜査のメスを入れ、たちまち有力な次期大統領候補に躍り出た尹錫悦・前検事総長らとの候補一本化を視野に動きだすとみられる。

 一方、与党は巻き返しへ総力を挙げることになる。文政権のレームダック(死に体)化が濃厚になる中、主流派の「ポスト文氏」争いが加速しそうだ。

 当初、有力視されていた李洛淵・前首相は今回、選挙対策委員長を務めたため、敗北の責任を取って大統領候補としての影響力も大きく後退。もう一人の有力候補である非主流派の李在明・京畿道知事との党内候補一本化を目指す可能性がある。

李在明氏(EPA時事)

李在明氏(EPA時事)

 大統領選直前に開催される北京冬季五輪を舞台に再び米朝対話の仲介役を果たすことで政権浮揚を図る可能性もあるが、バイデン米政権は北朝鮮に厳しい姿勢を見せており、現段階で実現は不透明だ。

 今回の与党惨敗を受け、文政権が日本との関係改善に歩み寄る可能性はさらに遠のいたとの見方が出ている。「もう文氏には強硬な反日の与党議員を説得し日本に譲歩する突破力はなく、対日政策が漂流する恐れがある」(日韓関係筋)という。

 元徴用工判決に沿って韓国の原告側が日本企業の資産を現金化したり、今月21日に予定されている慰安婦訴訟の判決で日本政府への損害賠償が命じられた場合、日本は「無政府状態のような韓国」(同筋)と向き合わなければならないかもしれない。