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文政権に“安保DNA”はあるのか


韓国紙セゲイルボ

平和唱える大統領、国民は無関心

 「神様、わが軍隊をお守り下さい」。ジョー・バイデン米大統領の就任の辞の最後の一節だ。いや、軍が国民を守るべきで、国民の代表である大統領が軍を守って下さいとは。大統領の姿はとてもぎこちなかった。

韓国の文在寅大統領(画面左)とバイデン米大統領(同右)のニュース映像=2020年11月、ソウル(AFP時事)

韓国の文在寅大統領(画面左)とバイデン米大統領(同右)のニュース映像=2020年11月、ソウル(AFP時事)

 大韓民国で軍の存在は大統領の就任の辞に登場したことがない。むしろ文在寅(ムンジェイン)大統領は就任するやいなや、軍を「政治の生贄」としてしまった。四つ星将軍(大将)が凌辱(りょうじょく)に遭い、屈辱を受けた三つ星将軍(中将)は自ら命を絶った。その結果、軍と共に崩れたのが国家安保だった。

 権力に馴(な)らされた軍は虎の目で敵の動態を窺(うかが)う代わりに「北朝鮮は主敵」という国防白書の表記を消して、「北朝鮮はわれわれと協力する対象」だと兵士たちに教える。北の銃弾が韓国の監視警戒所に飛び込む絶体絶命の瞬間に、韓国哨兵の重機関銃は故障した状態だった。休戦ラインの鉄柵は穴だらけだし、海岸のレーダーは眠っている。

 いま多くの国民は国を守る安保意識が文政権に存在するのか、深い不安を抱いている。先月も、金正恩(キムジョンウン)総書記が36回も核を強調し、核の高度化計画まで明らかにしたが、韓国政府は「北の非核化の意思は確固としている」と繰り返すだけだった。

 最近、米国は意味深長な言葉を韓国政府に投げた。米国防総省の報道官は「(戦時作戦統制権の移管は)われわれの兵力と人員を危険に陥れるだろう」と語った。作戦権の早期移譲をねだる韓国国防部を狙った発言だった。B級軍隊に作戦権を譲り渡せば、韓国に駐留する米軍の安全を担保できないという意味だ。

 1994年夏、スーパーやデパート食品売り場に長い行列ができた。ラーメンと小麦粉、缶詰め、携帯用ガスボンベは即座に品切れになった。北朝鮮の国際原子力機関(IAEA)脱退で生じた第1次北核危機の時の韓国の姿だ。その後、実際に北朝鮮が6回核実験を強行し、100個の核弾頭を保有しているという分析が出てきたが、心配する人がいない。大統領は平和を唱えて、国民は無関心だ。

 韓国は安保を放置して国を強奪される恥辱を体験した。百年過ぎても国を奪った日本だけを憎悪して、国を守れなかった自分たちの反省はない。独立運動家の安昌浩(アンチャンホ)先生は朝鮮滅亡の知らせを聞いてこのように嘆いた。「国を滅ぼしたのは日本でもなく、(国賊とされる)李完用でもなく、私自身だ。亡国の責任者はまさに私自身だ」と。

 韓国が友邦の助けで2度も国を救ったのは天運だった。今はそのような天運も、友邦の支援も期待し難い。血盟国ですら「こうするために、われわれは血を流して韓国を守ったのか」との嘆きの声があふれている。

 政府と国民が安保を放棄する国を誰が代わりに守ってくれるだろうか。大韓民国は果たして安寧でいられるだろうか。

(裵然國(ペヨングク)論説委員、2月9日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

軍に“リベンジ”する文政権

 「凌辱された四つ星将軍」とは白善燁(ペクソニョプ)将軍のことであり、韓国動乱の英雄で、本来なら国立ソウル顕忠院(国立墓地)に埋葬されるべきところ、文政権によって「親日派」と規定されて拒否された。

 「自殺した三つ星将軍」は李載寿(イジェス)元国軍機務司令官で、彼は5年も前のセウォル号事件の件で、当時救助に尽くしたにもかかわらず、「遺族不法査察」の汚名を着せられ世間に晒されていた。遺書を残して飛び降り自殺。最近になって李将軍の潔白が証明された。

 学生時代に軍や警察から“弾圧”されていた現政権の主流をなす「運動圏」は「積弊清算」の名の下に軍に対して“リベンジ”している、ように見えてしまう。軍こそは韓国の共産化を防ぎ、今日の繁栄を築く基礎を作ったとの評価もある中で、文政権の歴史観はまったく反対だ。両者は水と油で交じり合わない。

 だからロバート・メネンデス米上院議員(民主党)は嘆いた。「こんな政府のために(米軍は韓国動乱で)血を流したわけではない」と韓国紙のインタビューで吐露している。文大統領がバイデン大統領からの電話がいの一番に来ないからと、1月27日に中国の習近平主席に電話をかけ、共産党創党100周年を「心からお祝いする」と述べたことに強い懸念を示したのだ。

 最近の米中対立もあるが、朝鮮半島を挟むと米国と中国は未だに「休戦状態」の当事者だ。覇権野望を剥き出しにする中国共産党の長に「祝意」を送るとは、韓国はどっちの側だと問うのも当然だろう。こうした捻じれに韓国人だけでなく周辺国も「ぎこちなさ」を感じている。

(岩崎 哲)