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崖っぷちに立たされた文在寅政府


韓国紙セゲイルボ

民生中心の政策基調に転換を

 文在寅政府が最大の危機を迎えている。ソウル行政裁判所の尹錫悅(ユンソンヨル)検察総長(検事総長)に対する懲戒停止決定で、同懲戒を裁可した文大統領も深い傷を負った。文大統領の支持率は連日急落し、現政権の最大国政課題である検察改革の当為性まで揺らいでいる。

2020年1月14日、ソウルで記者会見する韓国の文在寅大統領(EPA時事)

2020年1月14日、ソウルで記者会見する韓国の文在寅大統領(EPA時事)

 12月28日に発表されたリアルメーターの調査で、文大統領への否定的な評価は59・7%で最高値を更新した。肯定的な評価は36・7%で政権発足後の最低値だった12月第2週と同率だ。通常、レームダックの基準となる支持率35%の崩壊が現実化するのではないかとの観測まで出ている。

 秋美愛(チュミエ)法務長官(法相)が無理な懲戒を押し通す誤発弾を放ったのが決定打になったが、現政府に赤信号が灯(とも)って久しい。「所得主導の成長」のような就任初期の華麗な修辞はいち早く色あせ、成長率・青年失業など各種指標も非常に悪い。蔚山地方選挙への介入疑惑と月城原発1号基の経済性評価操作論争、ライム・オプティマス資産運用事件など、大統領府を襲っている悪材料もおびただしい。大いに自慢してきた新型コロナ防疫まで危機に直面した。

 いわゆるコンクリート支持層と呼ばれる「湖南(全羅南・北道)、40代、進歩層」の離脱の動きが目立つ。主な理由は政権勢力の“無能”に対する失望だ。失敗を繰り返す不動産政策が代表的だが、“独善”はさらに深刻な問題だ。4月の総選挙で180議席を占めてから、野党との妥協は見られず、すべて権力を笠に着て押し通している。

 現政府が今からでも民心を収拾しようとするなら、国政の大転換が必要だ。文大統領はとりあえず閣僚人事で局面転換を試みているが、より重要なのは国政基調の変化だ。それなのに、文大統領は国土交通部長官(国土交通相)の任命を強行した。現政府になって野党の同意なく任命した26回目の閣僚級人事だ。大統領と与党の独走は変わらないとの懸念を持つのは当然だ。

 今こそ理念・陣営問題を離れて民生問題に集中すべきだ。核心支持層の声だけ聞いて、検察の骨抜きに執着して民生問題を疎(おろそ)かにしたことが民心離反の主要原因だ。

 自分でつまずいて転ぶ政権を見ながら、新年を迎える国民の心は重く複雑で息苦しい。文大統領は12月28日の大統領府首席秘書官・補佐官会議で“初心”と“心機一転”を強調した。この言葉通り、大統領府と与党は猛省して、さらに一新しなければならない。もちろん、誰よりも先に初心に帰り、心機一転しなければならないのは、文大統領その人だ。

(パク・チャンオク論説委員、12月31日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

見逃さない次を狙う者たち

 残り任期を1年数カ月残してレームダック化の兆しが出てきた文在寅大統領。韓国の歴代大統領が任期終盤で力をなくし、数々の失政や本人または周辺のスキャンダルが噴出し、退任後訴追されるパターンが繰り返されるかもしれない。文政治への民の怨嗟(えんさ)の声が大きければ、与党でうまくバトンタッチできたとしても、新政権は抗しきれずに、文氏を被告席に立たせる可能性もある。

 支持率の凋落(ちょうらく)が著しい。指摘されるようにコンクリート支持層の離反が目立つのであれば、もはや末期症状だ。崩れ出した砂山をせき止めるのが難しいように、修復は難しいだろう。そして核心支持層の離反は政権の推進力を奪う。

 トップが弱まると、それを見逃さないのが次を狙う政権中枢の実力者たちだ。さっそく、その動きが出ている。李洛淵与党代表が“政敵”である収監中の李明博元大統領、朴槿恵前大統領への「恩赦」を言い出した。保守層に向けたアピールであり、文政治との色分けを鮮明にしようとの動きだと捉えられている。

 これは巧妙だ。文大統領の“岩盤”は「湖南、40代、進歩層」。李洛淵氏はかつて全羅南道知事を務め、選挙区もここで、湖南地方を基盤としている。文氏を離れた湖南の人々が探す“次の神輿(みこし)”になろうということか。岩盤は赦免には強く反対しているが…。

 しかも李洛淵氏は、文大統領ほどエクストリームではない。湖南でありながら、保守をも意識する。分裂した国民の統合をリードしやすいポジションではある。

 記事では文政権の「心機一転」を求めているが、ソウル・釜山市長補欠選挙の結果次第では、レームダックどころではなく、政権崩壊が始まる可能性すらある。

(岩崎 哲)