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韓国政府、“防疫ゴールデンタイム”逃す


韓国紙セゲイルボ

経済への大打撃を憂慮か

 12月なのに街頭でクリスマスキャロルが聞こえない。点滅するイルミネーションとキラキラの飾りが付いたツリーも見られない。忘年会で賑(にぎ)わう飲食店も見つけ難い。わずか1年前には当たり前だった風景は今は遠い昔ことのように感じられる。

韓国の文在寅大統領(中央)=2月25日、大邱(EPA時事)

韓国の文在寅大統領(中央)=2月25日、大邱(EPA時事)

 主犯はもちろん新種コロナウイルス感染症だ。韓国内では今年1月に初めての感染者が確認された後、2~3月急激に拡散した。落ち着いたかにみえたが8~9月に第2波が来て、先月から第3波の局面に入った。

 新型ウイルス感染は単に病気次元の問題に終わらなかった。対面業種を中心に経済が大きな打撃を受けた。街中の飲食店、卸小売店はぞろぞろと休業と廃業に追い込まれ、働き口も急激に減った。国家経済もふらついた。

 “学習効果”はあったのだろうか。経済が一時的に萎縮しても、防疫に成功すれば結果的に被害を減らすことができることは、第1波と第2波の時、既に確認された。ところが第3波に対応して政府が防疫水準を高め、社会的距離を取る段階を上げるタイミングが“基準”より遅れたという指摘が出ている。

 防疫水準を高めるほど経済に及ぼす打撃が大きいことを知った政府が、“二兎”に欲を出して躊躇(ちゅうちょ)する間に防疫決定の“ゴールデンタイム”を逃したのではないかとの疑念が湧く。

 政府は当初、今年下半期の景気反騰を目標にしていたが、第2波が冷水を浴びせた。第3波が長期化すれば、来年の景気反騰も期待し難くなる。政府は社会的距離をとる段階を引き上げて対応中だが、拡散傾向は沈静化していない。

 幸いなのはワクチンが開発されて、一部国家で接種が始まったという点だ。韓国政府もグローバル製薬会社などからのワクチン確保に乗り出し、現在開発中の国産治療剤も早ければ来年初めから商用化が可能だという予想が出ている。

 もちろんワクチンと治療剤が開発されたからといって新型ウイルスが直ちに終息することはないが、少なくとも今年、全世界を巻き込んだ“恐怖”はある程度鎮まるはずで、韓国を含めた世界経済の活力が蘇(よみがえ)ると予想される。

 経済協力開発機構(OECD)は今年の韓国経済がマイナス成長(-1・1%)すると予想した。だが、加盟国のうちでは堂々の1位だ。それだけ相対的によく対応したということだ。第1波と第2波の時のように、今回の第3波もよく乗り越えれば、来年反騰への期待感も大きくなる。韓国経済の大きな軸である輸出も最近息を吹き返しており、励みになっている。

 「危機はすなわち機会」という言葉がある。第3波を一日も早く沈静化させ、新型ウイルス終息を早期に成功させるならば、2021年は韓国が「ポスト新型コロナ時代」に世界経済を主導する国として浮上する道しるべを立てる年になるのではないかと期待したい。

(ウ・サンギュ経済部次長、12月10日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

早くシャンパンを開けすぎたか?

 「K防疫」をはじめ最近韓国の英字頭文字「K」を付けて、世界的に認知された流行を誇示することが増えている。KPOPが有名だが、その前の「韓流」がはしりと言えばはしりだった。

 韓国の盛隆を象徴するもので喜ばしいことだが、好事魔多しで、浮かれすぎると足をすべらせることになる。中国武漢で新型コロナウイルスが発生すると、いち早く中国人の入国を制限したのは台湾だった。世界的に見て、世界保健機関(WHO)に加盟もしていない台湾が防疫に一番成功した。だが彼らは「T防疫」といってわざわざ広報宣伝まではしていない。よいことは黙っていても自然と知られるものだからだ。

 ここにきて世界中が春先のようにロックダウン(都市封鎖)を余儀なくされようとしている。防疫の程度を高めれば経済が打撃を受けることは記事の通り、各国政府は学習した。政治家は“二兎”を追う道を求めるが、アクセルとブレーキを同時に踏むことはできない。どちらの選択をしても、国民からは不満が出る。

 韓国政府は第3波が来てあわててブレーキをかけたが、「K防疫」の成功に酔っていたのか、タイミングを逸したとの批判が出ている。シャンパンを少し早く開けすぎたようだ。台湾のように静かにしていれば、恥をかくこともなかっただろうに。

 とはいえ、韓国の感染者追跡や隔離などの徹底ぶりは日本の比ではなく、学ぶべき点は多い。何とかしてコロナを抑え込み、かつてのように行き来できる日が来ることを祈る。

(岩崎 哲)