北朝鮮 駆け引き続く米朝


どうなる朝鮮半島情勢

正恩氏 長期戦も覚悟か

 北朝鮮の拉致・核・ミサイル問題や韓国の反日路線などで日本の安全保障や経済に大きな影響を及ぼしてきた朝鮮半島情勢。2020年は果たしてどのような動きが予想されるのか。現状と展望をまとめた。
(ソウル・上田勇実)

金正恩党委員長

12月28日、平壌で始まった朝鮮労働党中央委員会総会で報告する金正恩党委員長。朝鮮中央通信が29日報じた(朝鮮通信・時事)

 北朝鮮は昨年2月、ベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談が決裂して以降、年末まで「米国の英断を待つ」とし、制裁緩和に応じなければ「新しい道」へ進むと予告していた。その年末が過ぎ、新年を迎えた北朝鮮が果たしてどのような方針を打ち出すのか国際社会は注目している。
 昨年12月、北朝鮮は「クリスマスプレゼントに何を選ぶかは米国の決心次第」(外務省米国担当次官)と挑発し、北西部・東倉里で「重大実験を行った」(国防科学院報道官)と発表するなど米国への挑戦的言動を繰り返し、緊張を高めた。トランプ米大統領はこれに断固たる態度で臨んだ。

 これをめぐり一部では北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射や7回目の核実験に踏み切るなど強硬路線に転じるのではないかという観測も出ている。しかし、北朝鮮が米国の武力行使を覚悟の上とは思えず、あくまで狙いは「完全非核化には応じないまま制裁緩和を引き出すための揺さぶり」(元韓国政府高官)とみられる。

 これ以上、国際社会による制裁が続けば朝鮮労働党や人民軍など体制の屋台骨を維持する資金が先細りし、住民に約束した「経済発展」もままならない。金正恩党委員長の不安と焦りの裏返しが米国への揺さぶりとなって表れたというのが実際のところだろう。

 年末に開催された党中央委員会総会で正恩氏は軍事力増強と自力更生を強調した。北朝鮮に完全非核化を迫りたい米国と、米国から制裁緩和を引き出したい北朝鮮の原則的立場に変化は見られず、正恩氏としては米朝の駆け引きが長期化するのを覚悟せざるを得ない。

 ただ、11月の大統領選で再選を目指すトランプ氏が、外交実績をアピールするため北朝鮮との非核化交渉を再開する可能性はある。そこが正恩氏の狙い目だ。「新しい道」を公言した正恩氏は何かしらの強硬路線を打ち出す必要に迫られている。それがトランプ氏が嫌がる「ICBM発射・核実験」であると示唆しながら譲歩を迫る戦術だ。

 北朝鮮は米国との長期戦に備えるかのごとく、あの手この手で外貨獲得に奔走している。国連制裁により加盟国に義務付けられた海外派遣の北朝鮮労働者の帰国をめぐり、先月の期限を過ぎても多くの労働者が中国やロシアなど友好国を中心に「抜け道」を使って留まっているとみられる。サイバー攻撃による仮想通貨の奪取にも力を入れているようだ。北朝鮮に完全非核化を迫るにはこうした問題への対応も不可欠だ。