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火災から2カ月、パリのノートルダム大聖堂で初のミサ 


信仰の灯火は消えず

 フランス・パリのノートルダム大聖堂に壊滅的被害をもたらした火災から2カ月となる15日、大聖堂で火災後初のミサが執り行われた。建物は未(いま)だ不安定なため、司祭や信徒らはヘルメットを着用して参列した。

資金面で再建に不安要素

 ミサが営まれたのは、安全が確認された大聖堂東側の礼拝堂。パリ大司教区のミシェル・オペティ大司教によって象徴的にミサが営まれ、テレビでも実況中継された。

ノートルダム大聖堂

15日、パリのノートルダム大聖堂で、ヘルメットをかぶりミサに参加する聖職者(EPA時事)

 倒壊の恐れがあるため、参列者は30人程度。その半数が聖職者で、修復作業関係者や少数の一般信徒も出席した。

 会衆席は損壊を免れたが、尖塔の倒壊で大聖堂中心部には今も瓦礫(がれき)が散乱した状態が映像に映し出された。オペティ大司教は「この大聖堂は祈りの場だ。それがこの聖堂の唯一かつ真の目的だ」と訴え、信仰の火が消えていないことを強調した。

 複数の仏メディアの報道によれば、世界に衝撃を与えた世界遺産の同寺院の火災で、実業家など世界の富裕層が再建資金として、総額8億5000万ユーロ(約1030億円)の寄付を申し出たが、実際に集まっているのはその1割未満にとどまっている。

 ノートルダム大聖堂は現役のカトリック教会の聖堂であると同時に、パリを象徴する観光名所でもある。マクロン大統領は政府が再建を全面的に支援すると約束。パリ五輪が開催される2024年までの5年間で再建すると表明しているが、専門家からは疑問の声が上がっている。

 フランスには、シャルトル大聖堂などカトリック教会の歴史的建造物が多い。風雪や落雷、火災などの自然災害、さらには戦禍に巻き込まれるなどして、何度も破壊を経験してきた。だが、カトリック教会や時の権力者の指揮の下で、富裕層の信者の寄付や農民の大規模なボランティアによってその都度再建されてきた。

 オランド前左派政権下で、地方都市に移民向けの低家賃アパートを建てることが義務付けられた結果、アラブ系イスラム教徒が急増した。これにより町の小さな教会は立ち行かなくなり、聖堂が売却され、ホテルや個人住宅になる現象が増加。カトリック教徒の多い南ヨーロッパ諸国では最低の礼拝参加者数となっている。

 フランスの各自治体が教会の改築や修復の費用を払えず、現在7000以上の教会の建物が存続の危機に瀕(ひん)していると、仏メディアは報じている。毎年5~10棟の教会が解体されているとの報告もある。

 民衆の信仰で聖堂を再建した時代は過ぎた。ノートルダム大聖堂の火災直後は寄付の申し出が殺到したが、今後、実際にどの程度資金が集るかは不明で、教会と政府、自治体の負担が増えそうだ。

(パリ 安倍雅信)