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中伊覚書締結、欧州の結束乱れないか懸念


 イタリアを訪問した中国の習近平国家主席は、コンテ首相と会談し、シルクロード経済圏構想「一帯一路」推進に協力する覚書を締結した。

インフラ整備協力で合意

 中伊両国は道路や港、情報通信などのインフラ整備の協力で合意。外国の貨物に関税を課さない自由港のトリエステ港の鉄道インフラや、貨物取扱量で国内有数のジェノバ港の整備に中国企業が参画することなどで一致した。

 財政赤字に苦しむイタリアは中国からの投資と中国市場への輸出を活性化させたい考えだ。欧州連合(EU)加盟国のうち既にギリシャやポルトガルなど13カ国が覚書を締結しているが、先進7カ国(G7)ではイタリアが初めてとなる。

 一帯一路に関してEU側は、融資が透明性に欠けることのほか、欧州で中国企業による企業買収が進み、技術流出が進むことを懸念している。ユンケル欧州委員長は、このほど開かれたEU首脳会議の際に「中国との貿易関係に互恵性はなく、競争も公平ではない」「中国はパートナーであり、ライバルでもある」と強調し、中国に市場開放を求める考えを示した。

 今回の覚書締結で心配されるのは、欧州の結束が乱れることだ。2016年4月に中国企業が、財政悪化に陥っていたギリシャのピレウス港の運営権を取得した後、ギリシャはEUが南シナ海や人権などの問題で中国を批判しようとした時に反対するなど中国寄りの態度を示している。

 安全保障の面でも不安は大きい。中国の整備する港湾が、将来的に軍事利用される恐れもある。地中海などを管轄する米海軍第6艦隊の拠点はイタリアにあり、こうした港湾で米軍の通信を傍受することもできるようになるという。フランスのマクロン大統領は「欧州が中国に対し無警戒でいる時代は終わった」と警鐘を鳴らした。

 看過できないのは、習氏がイタリア紙への寄稿で「双方の核心的利益」を尊重することを呼び掛けたことだ。中国の核心的利益とは共産党一党独裁体制を維持するために絶対に譲歩できない重要問題で、台湾やチベット、新疆ウイグル、南シナ海などを指している。

 中国は南シナ海の軍事拠点化を進めているほか、チベットやウイグルの言語や宗教、伝統文化などをないがしろにして「中国化」を行っている。経済力を背景に、核心的利益の尊重という言葉で国際法違反や人権侵害に対する批判を封じることは許されない。

 台湾に関しても、習氏は統一に向けて武力の行使も否定していない。しかし共産党一党独裁の中国が、台湾の自由と民主主義を踏みにじることがあってはならない。

分断の動きに警戒を

 米上院では超党派議員団が、トランプ政権に台湾を含めた合同軍事演習を実現するよう努力を求めるなど台湾との関係強化を図る法案を提出した。

 台湾と価値観を共有する欧州は、台湾との連携を強化すべきではないか。中国による欧州分断の動きを警戒し、対中国で結束する必要がある。