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英国とEU、離脱派にポピュリズムの影


 欧州連合(EU)に留(とど)まるか離脱するかを問う国民投票を、英国は6月23日に実施する。ブリュッセルで開かれたEU首脳会議でEU改革案が合意されたことを受け、キャメロン英首相が発表した。

 域内第2の経済規模を持つ英国が、もし国民投票で離脱を決めれば、その政治的経済的影響は大きい。ただでさえ中東諸国からの難民の流入などで危機に直面しているEU統合が、一気に崩壊に向かいかねない。

 6月に国民投票実施

 中東からの大量の難民の流入や、それに伴うさまざまな事件が起き、EU内で「反移民」世論が強まっている。海を隔てた英国もEUの一員として、難民・移民問題を対岸の火事視するわけにはいかず、EU離脱派が勢いを増している。

 首脳会議では、EU側が英国残留のために大きく譲歩した。最大の焦点だった移民問題で、英国に移民への社会保障制限が認められた。さらにEUの統合深化への英国の適用除外や、自国内の金融機関や市場を監督する権利を持つことも明示した。

 キャメロン首相は合意成立後、「EU内で特別な地位を得た」と宣言した。この成果を掲げて、昨年の総選挙で公約した国民投票で残留派を勝利へ導こうという狙いだ。しかし、こうした戦略は早くもつまずいている。与党・保守党の有力者が相次いで離脱支持を表明し、離脱派が予想以上に根強いことが明らかとなったのだ。

 閣僚6人、330人の下院議員のうち100人以上が離脱派についたとみられる。さらに国民に人気の高いジョンソン・ロンドン市長が離脱支持を表明したことが、残留派にとって大きな痛手となっている。ジョンソン氏には、首相の後継を狙う野心があるとも言われる。

 党内にEU懐疑派を抱える保守党政権にとって、EU問題は常に足元を揺るがす難問だった。1992年、EU創設を定めたマーストリヒト条約の批准をめぐる党内の「欧州懐疑派」の造反で、当時のメージャー政権は振り回され疲弊した。その後の労働党政権は親EU路線だったが、キャメロン保守政権の誕生で問題がぶり返してきた。

EU離脱派は、EU加盟で部分的に制限された主権を回復することなどを主張する。しかし、キャメロン首相が誇示するように、英国はEUの一員でありながら、さまざまな特別待遇を認められた立場だ。

 EU懐疑派が支持を広げる背景に、一国主義、さらにポピュリズムの影を認めないわけにはいかない。英国の輸出先の半分がEUであることを考えれば、その巨大な単一市場の正式構成員でなくなることのデメリットは目に見えている。それでも、離脱論になびく人々がいるのは、根底にナショナリズム的感情が働くためと思われる。

 期待される冷静な判断

世論調査では、残留派と離脱派が拮抗しているという。国民投票の実施まで4カ月近くある。英国民が、EU離脱が自国さらにEU全体にどのような結果をもたらすか冷静に考える時間は十分ある。その間に、ポピュリズム的主張の非現実性が明らかになることを期待したい。