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英のEU離脱 欧州統合は大きな転機に


 英国はきょう欧州連合(EU)を離脱する。2016年の国民投票から3年半にわたって迷走した英国の離脱問題も「合意なき離脱」という最悪事態は一応免れた。初の加盟国離脱で欧州統合の大きな流れは転機を迎えることになる。

険しい亀裂修復の道

 欧州議会は、英国とEUが昨年10月にまとめた「離脱協定」を賛成多数で承認した。英側も離脱に関する法律が成立し、批准も済ませた。今後、英国とEUは今年末まで「移行期間」に入る。3月には自由貿易協定(FTA)交渉をスタートさせるが、年内に合意できるかどうかが最大の焦点になる。交渉がまとまらなければ「合意なき離脱」に近い混乱となる恐れがある。期限内の妥結を期待したい。

 離脱を果たす英国だが、国内世論を二分した亀裂を修復する道は険しそうだ。連合王国を構成するスコットランドは、EU残留派が多数を占め、独立運動が加速することが予想される。

 スコットランドでは14年に独立の是非を問う投票が行われ、反対票が多数を占めた。しかし、EU離脱で状況は大きく変わったと言える。自治政府のスタージョン首相は、再度独立の是非を問う投票実施に必要な権限委譲をジョンソン英首相に要求。スコットランド議会も独立投票実施への協力を英政府に迫る決議を可決している。同議会は、EU離脱後もEU旗を敷地内に掲げ続ける方針という。

 スコットランドの独立運動の高まりは、今後英国に深刻な影を落とすことになるだろう。もし独立が実現すれば連合王国の解体につながる。

 EUは第2次大戦後、再び戦いを起こさないようにと、独仏が中心となって欧州6カ国が1952年にその前身となる欧州石炭鉄鋼共同体を創設したことに始まる。ヒト、モノ、サービスの自由な移動を認める経済統合を進める一方、政治的な統合も進めてきた。加盟国は主権の部分的制限も受け入れ、難民や移民の流入などさまざまな問題や軋轢(あつれき)も生じるようになった。

 2013年のクロアチア加盟で28カ国に拡大したEU加盟国が減少するのは初めてのことだ。英国は欧州の国ではあるが、島国ということもあって、歴史的に大陸欧州とは違う独自の世界を創り上げてきた。単一通貨ユーロにも参加していない。かつての大英帝国の旧植民地だった国々との緩やかな国家連合、英連邦の中心でもある。

 EUの中でも、英国にはそのような特殊な立場があったものの、英国の離脱に触発され、他の加盟国で、同じように難民や移民の流入に不満を募らせ、EU離脱、反EUを掲げる右派政党の動きが活発化することも予想される。今後EUは統合の大義と恩恵を守っていくためにも、統合がもたらしたさまざまな問題を一つ一つ解決していく必要があるだろう。

日英FTAの締結急げ

 英国には700近い日系企業が進出している。英国を欧州の拠点としてきた日系企業は、戦略の立て直しを迫られるだろうが、これまでの日英の関係を今後も生かしたい。そのためにも日英のFTAの速やかな締結が望まれる。