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習近平氏演説、覇権主義の強まりを懸念


 中国共産党大会が開幕し、習近平総書記(国家主席)は建国から100年を迎える21世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」「世界一流の軍隊」の建設を目指す方針を表明した。

 共産党一党独裁体制を堅持するとともに、対外的には軍事力を背景に「強国路線」を推し進める決意を示したものだ。覇権主義的な動きの強まりが懸念される。

 「世界一流の軍隊」目指す

 習氏は今大会のテーマを「中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現に向けた奮闘」と定義。総書記就任以来の5年間を「歴史的な成果を収めた」と自賛した。

 しかし成果の一つとして、南シナ海の人工島造成や軍事拠点化を挙げたことは、力による現状変更を正当化するものであり、到底受け入れられない。オランダ・ハーグの仲裁裁判所は昨年7月、南シナ海をめぐる中国の主権主張を全面否定したが、習氏は法の支配の原則も無視している。

 東シナ海問題への言及はなかった。だが「海洋強国の建設」を引き続き重視するとも述べており、沖縄県・尖閣諸島周辺での領海・領空侵犯は今後も繰り返されよう。中国の強引な海洋進出への警戒が引き続き求められる。

 軍事面では、2035年までに国防・軍隊の現代化を、今世紀半ばまでに「世界一流の軍隊」の構築を目標に掲げた。中国は陸海空軍とロケット軍(戦略ミサイル部隊)による統合運用を軸とした軍改革で米国との差を縮めつつある。

 さらに「強固な現代的国境、領海、領空防衛システムを整備する」としている。こうした軍事力増強によって東・南シナ海や中印国境などで、力による現状変更の動きが一段と強まることが懸念される。

 中国が進めるシルクロード経済圏構想「一帯一路」には、軍事拠点構築の思惑もあるとされる。日本は米国とはもちろん、インドや東南アジア諸国との連携を強化し、中国の脅威に対処する必要がある。

 もう一つ見過ごせないのは、台湾との関係だ。習氏は中台双方が「一つの中国」原則で合意したとされる「92年合意」に言及し、蔡英文政権に合意の受け入れを改めて迫った。

 また、一国二制度による中台統一構想に言及した上で「われわれには、いかなる形の台湾独立の画策も打ち負かす強い意志と自信、能力がある」と述べた。一国二制度は香港で既に形骸化しつつある。香港と同じ方法で台湾への圧力を強めることがあってはなるまい。

 習氏は「民族分裂活動、過激な宗教活動を防止し、断固として取り締まる」とも表明した。中国では先月、改正宗教事務条例が公布された。宗教団体や信者には憲法順守などに加え、「社会主義核心価値観の実践」を新たに要求するものだ。

 宗教への締め付け警戒を

 ウイグル族のイスラム教徒やチベット仏教徒を念頭に置いたものだろう。今回の党大会で習氏が権力基盤を一層固めることで、宗教や少数民族への締め付けが強化されることにも警戒が必要だ。