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ロヒンギャ迫害、難民を安全に帰還させよ


 ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャが隣国バングラデシュに大量脱出している。ミャンマー治安部隊による掃討作戦に伴うものだ。

 40万人以上が国外へ

 難民流出のきっかけは、ロヒンギャ武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」が先月末、ラカイン州の警察施設などを襲撃したため、治安部隊が武装集団の掃討作戦に着手したことだ。

 バングラデシュに脱出したロヒンギャ難民は40万人以上に上っている。バングラデシュ政府や国連の支援も追い付いていない状況だ。

 武装集団の取り締まりは当然だとしても、これだけ大量の難民が発生したのは、明らかに治安部隊による掃討に行き過ぎがあったためだ。一般住民に対する暴力をすぐに停止しなければならない。

 ミャンマーは細かく分類すると100以上の民族で構成される多民族国家だ。仏教徒が9割近くを占める。ロヒンギャは西部ラカイン州を中心に暮らしているが、ミャンマー政府は「バングラデシュからの不法移民」と見なして国籍さえ与えていない。このため、激しい差別の対象となっている。

 この問題では、事実上の政権トップのアウン・サン・スー・チー国家顧問に対する国際社会の非難が高まっている。ロヒンギャ住民の保護に向けて迅速に対応していないためだ。

 インターネット上では、スー・チー氏のノーベル平和賞取り消しを呼び掛ける署名に40万人以上が参加している。グテレス国連事務総長と国連安全保障理事会は、暴力の激化を相次いで非難し、ミャンマー政府に事態の改善を要求した。グテレス氏は「民族浄化」に該当するとの認識を示している。

 これに対し、スー・チー氏は国民向けの演説で国際的な調査を受け入れる用意があることを示唆。難民の帰還に向け、身元確認手続きをすぐにでも開始する考えがあると述べた。元の居住地に安全に戻れるようにする必要がある。

 もっとも、実際にロヒンギャを迫害しているミャンマー国軍は、軍事政権下で制定された憲法で強大な権限が保障され、政府ではなく、国軍総司令官の統制下にある。このためスー・チー氏ではなく、ミン・アウン・フライン国軍総司令官に圧力を掛けるよう国際社会に訴える動きが出ている。

 国際社会が注意すべきであるのは、海外からのスー・チー氏への批判の高まりが国軍を利することだ。

 米欧諸国はミャンマーの民主化運動の象徴としてスー・チー氏を長年支え、米国は「民主化の進展」を理由にミャンマーに対する経済制裁を解除した。だがスー・チー氏が力の源泉の一つとしてきた米欧の信頼が損なわれれば、国軍の力が強まり、ロヒンギャにとって事態は一層悪化しよう。

 宗教対立を解消せよ

 ミャンマーの仏教徒の間では反ロヒンギャ感情が根強い。スー・チー氏には、国籍付与などロヒンギャの人権向上とともに、国内の宗教対立を解消することが求められる。