世界日報 Web版

アジア安保会議、米国は地域安定へ関与強化を


 英国のシンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」が主催する「アジア安全保障会議」が開かれ、アジア太平洋地域や米欧など50カ国以上の国防相や軍幹部らが参加した。

 会議では、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や、中国が軍事拠点化を進める南シナ海の問題が焦点となった。米国は地域の安定に向け、関与を一層強化する必要がある。

 マティス氏が中国を批判

 アジア安保会議で演説したマティス米国防長官は、北朝鮮について「われわれすべてにとって脅威だ」と警鐘を鳴らし、核・ミサイル政策を放棄するまで外交、経済的圧力を掛け続ける考えを示した。中国に対しては、南シナ海の軍事拠点化や一方的な現状変更に「反対する」と明言。台湾との関係にも触れ「断固として関与し続ける」と牽制(けんせい)した。

 北朝鮮は今年既に9回の弾道ミサイル発射を強行した。日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したものもあり、日本にとっては深刻な脅威だ。

 米軍は原子力空母「カール・ビンソン」に続いて「ロナルド・レーガン」を韓半島近海に派遣するなど圧力を強化。北朝鮮への軍事行動も排除しない方針を示している。

 一方、トランプ米政権は北朝鮮問題での協力を期待する中国への配慮が目立つ。中国は南シナ海の西沙(パラセル)諸島で既に空軍基地を整備。南沙(スプラトリー)諸島も軍事利用が可能になったとみられる。トランプ政権は南シナ海で5月下旬に「航行の自由作戦」を初めて実施したものの、公式発表はしなかった。

 オーストラリアのターンブル首相は「米国のリーダーシップ、地域への関与、そして自由、民主主義、法の支配といった価値がかつてないほど重要になっている」と述べ、南シナ海問題で米国に積極的な役割を果たすよう求めた。マティス氏の演説には地域各国の懸念を払拭(ふっしょく)する狙いがあったと言える。

 確かに、北朝鮮の核・ミサイル問題に対処する上で中国の協力は重要だ。だが南シナ海をめぐって、昨年7月の仲裁裁判所判決は中国の主権を否定しており、軍事拠点化を容認することはできない。

 オバマ前米政権はアジア太平洋地域の外交と安保を重視する「リバランス(再均衡)」を掲げた。だが結局、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の一方的な南シナ海進出を止めることはできなかった。トランプ政権は地域安定に向けた関与を目に見える形で強めるべきである。

 日本は良好な関係生かせ

 稲田朋美防衛相はマティス氏との会談で、北朝鮮に対して海上自衛隊と米原子力空母2隻が日本海で実施した共同訓練について、抑止力向上に資するとの考えで一致。中国公船の領海侵入が相次ぐ沖縄県・尖閣諸島に、対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条を適用することも改めて確認した。

 安倍政権は日米両国の良好な関係を米国のアジア太平洋地域への関与強化につなげる必要がある。米国を引き付けるには、日本が自主防衛力を高めていくことも求められる。