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香港議員資格剥奪、「一国二制度」形骸化を許すな


香港独立を視野に入れる「本土派」立法会(議会)議員2人の宣誓問題で、中国は議員資格剥奪に踏み切った。

 全人代が基本法を解釈

 中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が示した香港基本法(憲法)104条の解釈では、議員が宣誓を拒絶したり、不正確・不誠実に行ったりした場合は公職資格を失うとされた。2人の議員資格を取り消す内容だ。

 2人は9月の立法会選で当選し、10月の就任宣誓時に「香港は中国ではない」と書かれた旗を議場で広げたほか、中国を「支那」と読み上げた。このため、香港政府が2人の宣誓は基本法に違反しており、議員の資格を失ったとして高等法院(高裁)に司法審査を申し立てていた。

 それにもかかわらず、全人代常務委は司法審査の頭越しに解釈を下した。1997年の香港返還以降、全人代常務委が基本法について解釈を示すのは5度目だが、今回は香港の司法の独立への干渉だ。

 全人代幹部は、この解釈について「(宣誓内容として基本法が定める)『基本法の擁護』の根本は『一国』を堅持し擁護することだ」と言い切った。香港の高度な自治を認める一国二制度の形骸化につながる考えであり、容認できない。

 2人の宣誓時の行為をめぐっては、香港でも支持が広がっているわけではない。ただ、2人は民意によって選ばれた議員だ。力による封じ込めは反中感情を高めるばかりだろう。

 中国の強権発動の背景には、香港の若者らに広がる独立論に対する習近平指導部の強い危機感がある。7月に公表された世論調査によると、香港返還50年に当たる2047年以降の独立を支持するとの回答は、全体で17%、15~24歳に限ると39%に達した。

 独立論が主流とは言えないまでも、習指導部にとって本土派は無視できない存在だろう。台湾でも、独立志向の強い民進党の蔡英文政権は「一つの中国」の原則を認めていない。香港や台湾の若い世代には「自分は中国人ではない」という自己認識が広がっている。

 中国は近年、香港への政治的圧力を強めてきた。14年に発表した香港白書は「中央政府は香港の全面的な管理統治権を持つ」と強調。昨年施行された「国家安全法」では、香港住民にも国家主権と統一、領土を守る義務を負わせた。

 しかし14年には、行政長官選挙制度の民主化を求める学生らが長期間、道路を占拠する「雨傘運動」が起きた。中国本土の「禁書」を扱う書店関係者失踪事件では、一国二制度に対する信頼が揺らいだ。中国が締め付けを強めれば、香港が混乱に陥る可能性もある。

 国際公約を蔑ろにするな

 習国家主席は先の共産党第18期中央委員会第6回総会(6中総会)で、自らを「核心」と位置付け権力集中を図ったが、党内では反発も多いとみられる。

 香港政策で強硬姿勢を示すのは、自身の求心力を維持する狙いもあるのだろう。しかし、そのために国際公約でもある一国二制度を蔑(ないがし)ろにすることがあってはなるまい。