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米比新軍事協定締結、同盟国との信頼強化を歓迎


 米国とフィリピンが新たな軍事協定を締結した。協定は有効期限が10年で、軍事力を背景に南シナ海への海洋進出を強める中国を念頭に、米比軍事協力の大幅強化が可能になり、米軍のフィリピン国内基地へのアクセスが段階的に拡大することになる。米軍は22年ぶりにフィリピンに復帰し、事実上再駐留することになる。

 中国の海洋進出を念頭に

 米比両国は1951年に相互防衛条約を締結した。東西冷戦時代にフィリピンは米軍の重要な中継、補給基地としての役割を果たし、米軍はクラーク空軍基地やスービック海軍基地を拠点にフィリピンへの駐留を続けた。しかし冷戦終結後、フィリピンで91年に上院が基地存続条約の批准を否決したため、米軍は92年までにスービック、クラークを含め全面撤退した。その後、中国の南シナ海への進出が始まった。

 オバマ米大統領はアジア歴訪最後の訪問国となったフィリピンで、アキノ比大統領との共同記者会見に臨み「フィリピンは戦略的な位置にある」と語り、新協定が中国を念頭に置いたものであることを示唆した。

 軍事協定であり守秘義務の点から、内容全体がすべて明らかにされているわけではないが、米軍の拠点には、中国の艦船が活動を活発化させている海域にも近いスービック基地が含まれる。すでに米海軍はクラーク基地を拠点としてP3C哨戒機などの偵察機を南シナ海に派遣している。

 99年には米軍のフィリピン国内への一時滞在を認める米比地位協定も締結しており、スービックには米軍艦船が巡回配備・展開されている。2002年以降は対テロ作戦支援を名目に南部ミンダナオ島に米部隊が巡回駐留している。新協定は米軍の巡回や比軍基地使用の拡大に向けた長期的なルールとなり、米軍が再び拠点を構築することで、中国を牽制(けんせい)する狙いがあるとみてよい。

 経済力をつけ、国力の増大に自信を持って「中華民族の偉大なる復興」を目指す中国が、南シナ海の領有権問題で既成事実を積み重ねている姿勢に対し、フィリピンをはじめとする東南アジア諸国では警戒感が強まっている。

 菅義偉官房長官は米比新軍事協定調印について「オバマ政権がアジア重視、リバランス(再均衡)政策をさまざまな形で実行していくことは歓迎したい」と述べた。

 今回の訪日時の「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内」という発言は、これまでクリントン前国務長官、パネッタ前国防長官らが繰り返し述べてきたことであるが、オバマ大統領が歴代大統領として初めて明言したことに意義がある。中国を牽制する言葉としてこれ以上適切なものはない。大統領は韓国の米韓連合軍司令部における演説でも「同盟国防衛には、軍事力行使もためらわない」と強調し、北朝鮮を牽制した。

 オバマ氏の歴訪を評価

 今回のアジア歴訪でオバマ大統領のアジア重視戦略が確認され、同盟国からの信頼を揺るぎないものとする努力がみられたことを多として評価したい。