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東洋的“夢の舞台”で魅了ーウズベキスタン


公演再開したナボイ劇場
場内装飾もイスラム的な意匠

 新型コロナウイルス・パンデミックで制限されてきた芸術活動が、徐々に活発化しつつある。モスクワのボリショイ劇場とともに旧ソ連の四大劇場の一つとされる、ウズベキスタンの首都タシケントのナボイ劇場でも9月から公演が再開された。

 同劇場は、1939年に建設が開始されたが、第2次大戦の勃発で中止され、戦後再開した。その際、日本人抑留者457人が建設に携わった。抑留者とはいえ熱心に仕事をする日本人の姿は、ウズベク人に強い印象を残した。1966年のタシケント地震で、多くの建物が倒壊する中、ナボイ劇場は無傷だった。手抜きをしない日本人の仕事によるとの評判が高まった。以後、日本と同国の友好のシンボル的存在となり、2015年、安倍晋三首相(当時)夫妻が公式訪問した際も、同劇場で記念コンサートを聴いている。

 同劇場にとってもコロナ禍による長い休演期間は苦しかったが、団員や職員への給料は支払われ続け、オンライン・コンサートも行った。ウズベキスタンを代表するオペラ歌手で劇場の理事長でもあるラムズ・ウスモノフさんは「ナボイ劇場にとって日本人は特別なお客様。これから公演が活発化するので、ぜひ観(み)に来ていただきたい」と語る。

 ナボイ劇場の内部は、西洋型のオペラ・バレエ劇場の形をしているが、至る所に東方的な意匠が用いられているのが、大きな特徴であり魅力だ。

 正面外観は重厚なビザンチン様式、中に入ると、ウズベキスタン独特のイスラム的様式の装飾が施されている。1階から3階の各階に小ホールがあり、「サマルカンド・ホール」「ブハラ・ホール」などウズベキスタンの代表的な都市の名前が冠せられている。壁、天井、シャンデリアなど、その地方の特色を現した装飾が付されている。

 これら内部の装飾を観るだけでも楽しいが、公演を観てこそ、この劇場のユニークさを知ることができる。今回、同劇場バレエ団とオーケストラによるバレエ公演「二つの心」を観た。観客の入りはまだ半分ほどだったが、若い男女の悲恋物語は、東洋的な雰囲気を濃厚に醸し出した振り付け、衣装、舞台装置が一体となった夢のような舞台だった。案内してくれた振付師のヌリチベトウさんも、「ここでは特に、その点に力点を置いています」と言う。

 この独特の味わいは、西洋バレエに親しむ一方でシルクロードへ強い憧れを抱く日本の観客の心を強く引き付けそうだ。

(タシケント・藤橋 進)


ナボイ劇場

ナボイ劇場 正式名称は、アリシェル・ナボイ記念国立アカデミー劇場

=建設に日本人抑留者が貢献=

 ナボイ劇場 正式名称は、アリシェル・ナボイ記念国立アカデミー劇場。アリシェル・ナボイはウズベキスタンの国民的詩人。設計者はロシア人のアレクセイ・シュチューセフ。舞台の広さ540平方㍍、客席1400席。第2次大戦後、457人の日本人抑留者が建設に携わった。

 1996年、カリモフ大統領(当時)によって、その貢献を顕彰するプレートが劇場の外側の壁に嵌(は)め込まれている。当初、「日本人抑留者が建設に携わった」とされていたが、カリモフ大統領は、「日本とウズベキスタンが戦争をしたことはない」と、抑留者ではなく日本人と改められた。