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改革路線を国民が支持 ウズベキスタン ミルジヨエフ大統領の再選


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 中央アジアのウズベキスタンで先月24日、大統領選挙が行われ、シャフカト・ミルジヨエフ大統領(64)が再選された。政治・経済・社会の各分野での大胆な改革路線を推進し、好調な経済を背景に国民生活が向上していることが支持された。政治の民主化は西側諸国と比べなお不十分にみえるが、メディアの自由化など改革は確実に進んでいる。
(タシケント・藤橋 進)

首都再開発など経済に勢い
メディア自由化 民間TV局続々開設

ミルジヨエフ大統領

ミルジヨエフ大統領

 ミルジヨエフ氏は2016年のカリモフ大統領(当時)の死去を受け、大統領代行に選出され、同年12月の大統領選挙で当選(任期5年)。就任後、前政権の権威主義的な統治から、現実主義による改革路線へと大きく転換させた。

 外交面では、ロシア、中国、米国と関係を強化する全方位的バランス外交を展開。周辺の中央アジア諸国とも協力関係を築いた。大統領に国民の声が直接届く「目安箱」を設け、官僚たちに現場主義を徹底させるなど、政府と国民の間の風通しを良くした。

 経済分野ではさまざまな規制を撤廃するなど改革を進め、ここ17年から20年にかけ18%の経済成長を遂げた。電力・石油・ガス、通信など国有企業の民営化も進め、これら改革と規制緩和による経済活性化によって、国民所得は16年から28%増加している。

 

ウズベキスタン

ウズベキスタン

 この国を6年ぶりに訪ね、まず気づくのは、首都タシケントにヨーロッパ風の洒落(しゃれ)たレストランが増えたこと。しかし何よりその勢いを感じさせるのは、首都再開発プロジェクトだ。市中心部の約80㌶のエリアにビジネスセンター、会議場、ホテル、ショッピングモールなどからなる複合エリアを建設し、世界と繋(つな)がるビジネス都市にしようというもの。17年から建設が始まっており、一昨年開業した「ヒルトン・タシケント・シティ」の隣の51階建てのビジネスセンタービルほか多数のビルが建設中だ。

 選挙戦でミルジヨエフ氏は、①国民1人当たりのGDP(国内総生産)を1・6倍に引き上げる②GDPに占める民間セクターの割合を8割まで引き上げる――などを2期目の目標に掲げた。

 5候補が立候補する中、結果は予想通りミルジヨエフ氏が80・1%の票を獲得する圧勝だった。選挙当日は、欧州安全保障協力機構(OSCE)、上海協力機構などの631人が監視を行った。しかし選挙後、OSCEはミルジヨエフ氏以外の候補も政権よりであることから、選挙を「真の競争を欠いていた」と指摘した。

「タシケント・シティ」の首都再開発地域では、高層ビルの建設が進んでいる。左はヒルトン・ホテル

「タシケント・シティ」の首都再開発地域では、高層ビルの建設が進んでいる。左はヒルトン・ホテル

 それでも圧勝とはいえ、得票率が90%台だったカリモフ大統領時代に比べると他の候補の得票が10%近く多くなっている。そのうち最も多い6・6%はウズベキスタン国民民主党の女性候補が獲得している。

 今後のウズベキスタンの民主化の行方を占うものとして、メディアの自由化、とりわけ民間メディアの活発化が挙げられる。新聞よりテレビが中心のこの国で、ここ5年ほどの間に、「セビンリ」「OKテレビ」など民間の4テレビ局が開局した。

 テレビ関係者の話では、以前と比べ遥かに自由な放送を行っているという。インターネット上への発信、ブロガーの活動も盛んで自由に発言しているという。SNS上の検閲はないかと、中国の例を挙げて質問すると、「そんなことはない」と口々に語る。

タシケントの選挙報道メディアセンターでは地元報道機関が活発な動きを見せていた

タシケントの選挙報道メディアセンターでは地元報道機関が活発な動きを見せていた

 「ダーラクチ」紙の編集に携わる選挙メディア協会のルスタム・ヤボロフ氏は「これまで国営メディアはいい情報だけを流してきたが、悪い情報も報ずるようになった」という。ただし、激しい政権批判というのはない。ヤボロフ氏は、「われわれは欧米の国と違って、東側の国だ。上の立場の人には節度をもって対する」と言う。

 ソ連崩壊とともに独立した中央アジアの5カ国のうち、ウズベキスタンは順調に民主化が進んでいるが、ソ連時代の残滓(ざんし)、そしてより歴史的な伝統による権威を重んずる政治文化は簡単には改まりそうにない。それでもこの国に吹き出した自由な風は、経済だけでなく、政治分野でも、時間をかけながらも変化をもたらしていくと思われる。