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クーデター半年 ミャンマーの対中傾斜回避を


弾圧をかいくぐって続けられているミャンマーの反軍政デモ=7月29日、ヤンゴン(AFP時事)

弾圧をかいくぐって続けられているミャンマーの反軍政デモ=7月29日、ヤンゴン(AFP時事)

 ミャンマーで国軍がクーデターを起こし全権を掌握して半年が経過した。国軍が設置した最高意思決定機関、国家統治評議会は、暫定政府の発足と国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官の首相就任を発表。総司令官は2023年8月までの総選挙実施を表明した。

930人以上が犠牲に

 国軍が制定した現行憲法では、非常事態宣言は最長2年間。その終結後は、半年以内の総選挙実施を定めている。23年8月までの総選挙実施表明は憲法規定に沿ったもので、政権の正統性を国際社会にアピールしようとしているが、民主化を頓挫させただけでなく、政変で暴力にさらされたことへの国民の怒りは根強く残ったままだ。

 国軍の弾圧で930人以上が犠牲になった。国民の命を守るべき国軍が、無防備で無辜の市民にライフルを向けたのだから、30年前の中国の天安門事件に匹敵する暴挙だ。逮捕者も7000人を超えた。

 政変は市民生活を直撃。ガソリンやコメ、食用油など生活必需品の値上がりが続く中、政府の締め付けで銀行口座からの現金引き出しは制限され市中の現金不足が続く。通貨チャットの相場はクーデター後の半年間で約20%下落した。

 世界銀行は先月、ミャンマーの経済成長率が21年会計年度(20年10月~21年9月)にマイナス18%に落ち込む見通しだと発表した。政変による混乱だけでなく、新型コロナウイルス変異型の感染拡大が経済危機に拍車を掛けている。

 ミャンマーでは政変後、ワクチン接種などの対策が滞ったところに、感染力の強いインド型が蔓延(まんえん)。連日4000~5000人の新規感染者が確認され、ほぼ崩壊状態にある医療体制の下、まともな治療も受けられないまま毎日のように300人以上の死亡者が出ている。

 クーデターとコロナで二重苦のミャンマーだが、注意を要するもう一つのCが存在する。それがチャイナ(中国)だ。

 インド洋の出入り口となるミャンマーは、中国にとって地政学的要衝の地だ。だからこそ中国は大金を投じてミャンマー西部のチャウピューに港湾を整備し、雲南省と結ぶパイプラインを建設。ダムや鉄道などのインフラ整備にも余念がない。

 「自由で開かれたインド太平洋」構想を外交の柱に据えているわが国としても、インドと東南アジアの連結点に位置するミャンマーが中国に取り込まれるのは悪夢でしかない。

 自由民主主義に反するからと安易に制裁を科せば、ミャンマーを中国側に押しやるだけだ。わが国が求めるのは「自由」だけでなく、「開かれた」インド太平洋でなければならない。

軍、NLD双方と交渉を

 その意味でも外交には用心深いかじ取りが要求されるが、わが国にはかつて軍事政権下のミャンマーで軟禁中のアウン・サン・スー・チー氏の自宅脇に大使公邸を置いた歴史がある。力に迎合せずスー・チー氏を国際社会を代表して見守ってきたのだ。その延長線上に大局観を持った外交路線を定め、国軍、国民民主連盟(NLD)双方と粘り強い交渉を続ける必要がある。