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ウズベキスタン 近隣諸国と友好善隣を復活


外交成果挙げるミルジヨエフ大統領

中央アジア・コーカサス研究所所長 田中哲二

水資源や環境・経済で連携

 2016年12月に就任したウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は、5年の任期の終わる今年10月に大統領再選選挙の洗礼を受ける。内政・外交両面でさまざまな改革を実施してきた大統領が、その成果を評価されて支持率の高い信任投票的な結果となる可能性が高い。

日本は中央アジア外交見直しを

 外交での成果でまず特筆すべきは、近隣中央アジア諸国との「友好善隣外交」の復活である。それは前カリモフ政権の外交政策を180度転換させたものと言っていい。就任直後から周辺国首脳との往来を活発にし、ほぼ1年以内にすべての中央アジア諸国との間で国境を開放し国交関係を正常化させた。今やウズベキスタンと周辺中央アジア諸国は、国境での緊張をはらんだ関係から戦略的パートナーシップ関係へと大きく変化したと言える。

2019年11月、ウズベキスタンの首都タシケントで開かれた第2回中央アジア諸国首脳協議会で発言するミルジヨエフ大統領(中央右)と各国首脳(ウズベキスタン大統領広報部)

2019年11月、ウズベキスタンの首都タシケントで開かれた第2回中央アジア諸国首脳協議会で発言するミルジヨエフ大統領(中央右)と各国首脳(ウズベキスタン大統領広報部)

 こうした「友好善隣外交」推進の延長として、ミルジヨエフ大統領は17年9月、第72回国連総会で「中央アジア諸国首脳協議会」の結成を提案し、第1回会合が18年にカザフスタンに花を持たせる形で同国の首都アスタナで開かれた。ソ連邦離脱後初めての純粋な中央アジア諸国首脳だけによる協議会合の結成である。第2回会合は19年11月、ウズベキスタンの首都タシケントで開催。「中央アジアの結束が強まっているのは歴史的にも必然である。政治、安全保障、安定の維持、持続可能な発展の達成における地域協力の活性化は、中央アジア諸国民の深い関心に応えるもの」などとした共同宣言が採択された。

 ミルジヨエフ政権による友好善隣外交の推進は、ウズベキスタンの内政や経済に好結果をもたらしている。まず、独立以来「中央アジアの政治・経済協力体結成」のボトルネックとなっていたアラル海の干上がり・干害に象徴される「水資源配分抗争」に解決の方向性が見えてきたことである。

 昨年の第75回国連総会では、ミルジヨエフ大統領がアラル海沿岸一帯を環境技術イノベーション地域と宣言する決議の採択を提唱し、全会一致で承認された。この決議は、日本を含む世界各地の約60カ国が共同提案国となった。タシケントは今や水資源の利用、気候変動や環境破壊など中央アジア共通の諸課題の解決に向けた取り組みや地域協力に関わる幅広い問題について意見交換する場に変貌しつつある。

中央アジア・コーカサス研究所所長 田中哲二

 経済分野に限ってみても、隣接する中央アジア4カ国との貿易高は16~20年の間に2倍以上の50億㌦近くとなった。露・中のウエートの高い貿易高全体に占める中央アジア諸国の割合も10%から15%に上昇しており、中でも隣国キルギスとの貿易額は一挙に5倍以上となっている。

 中央アジア資本の参加する合弁企業設立も、16年から5年間で312件から1451件と約4・5倍に拡大している。こうした近隣諸国との相互連携によるウィンウィンの関係構築の努力はコロナ禍の中にあってもさらに進められている。

 ウズベキスタンの「善隣友好外交」は、同国南部と国境を接するアフガニスタンにも及んでいる。アフガニスタン情勢の安定とシリア、パレスチナの安定は、南西アジア・中東の平和のための眼目である。ミルジヨエフ大統領は、アフガニスタン内で対立する勢力間の対話を促しながら和平プロセスの推進を積極的に後押ししようとしている。この7月にはタシケントで「中央アジアと南アジアの連結性」についての国際会議を主催する予定。同国で経済インフラ事業(特に流通インフラ)を整備し、経済復興の加速を支援している。

 また、中央アジアと主要国との対話・協力機構に主要メンバーとして積極的に参加し、その推進役となっている。中央アジア諸国は、米国、EU、韓国、インド、中国、ロシアとの間に新しい対話・協力機構を誕生させているが、実はこれらのほとんどは04年8月に当時の日本の川口外務大臣が最初にウズベキスタンのタシケントで提起した「中央アジア+日本」対話スキームをモデルとしたものである。これは欧米の外交官や中央アジア専門家も広く認めているところであり、原案を川口大臣へ提案した者として多少のプライドを持って改めて指摘しておきたい。

 一方で若干気掛かりなのが対日外交である。ミルジヨエフ大統領は就任後3年を経た19年12月に公式実務訪問賓客として初来日し、安倍晋三首相(当時)との首脳会談を行った。この大統領の訪日は、周辺中央アジア諸国、ロシア、中国、米国、トルコ、韓国、インド、フランス、ドイツ、UAEと比べてその時期と頻度において大幅に劣後するものだった。このことは、日本の中央アジア外交がいつの間にか「資源国カザフスタン」重視に偏っており、ミルジヨエフ大統領の下で「中央アジア結束の要」に変貌しつつあるウズベキスタンとの外交・経済協力関係を見直さなければならないことを意味しているようにも考えられるのである。

 こうした意味で、去る5月12日に、菅義偉首相がミルジヨエフ大統領と中央アジア地域での初の電話首脳会談を開き、ウズベキスタンのさらなる経済発展と近代化のための経済・技術援助と投資の継続と、特にJICA(国際協力機構)を介した金融・財政制度と企業経営ノウハウの移転支援の強化、シルクロード両端国として文化交流・人的交流の一層の拡大に合意したことは意義のあることと言わねばならない。