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ミャンマー 国軍の民主化潰しを憂う


 ミャンマーでクーデターが起き、国軍が政権を奪った。

 国軍は、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相ら政府・与党幹部を拘束した上で、1年間の非常事態宣言を全土に発令し、国家の全権を握った。2011年3月に民政移管されたミャンマーの民主化は、10年足らずで軍靴で踏み潰(つぶ)された格好となった。国軍の暴挙を憂う。

選挙結果覆すクーデター

 昨年11月の総選挙では、スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が上下院(定数664)で396議席と圧勝。国軍系野党の連邦団結発展党(USDP)は33議席にとどまった。

 国軍が国際社会の批判も顧みず伝家の宝刀を抜いたのは、選挙に惨敗し影響力低下への焦りがあったもようだが、クーデターはその民主的な選挙結果を力で覆す暴挙だ。

 国軍は選挙に不正があったと抗議している。だが投票率は70%を超え、日本を含む国際的な選挙監視団も「公正な選挙」だったと評価。選挙管理委員会も国軍の申し立てを退けている。選挙結果を左右するほどの不正があったという国軍の主張には無理があり、単なる口実にすぎない。

 国軍が思い描くシナリオは、1年後の総選挙でNLDが候補者を出せないようにした上で少数政党乱立の選挙を実施し、USDPとの連立政権を樹立してミャンマー政治を牛耳ろうというものだろう。だが、これでは国民は納得しないし国際社会も認められない。

 その結果は、経済低迷と国際的孤立だ。無論、内政不干渉を原則とする東南アジア諸国連合(ASEAN)は沈黙を保ち、強権統治を国際社会に輸出し影響力拡大を図っている中国は歓迎するだろう。今回のクーデターも、中国の後ろ盾とASEANの黙認をあてにしていたふしがある。

 何より懸念されるのは中国への傾斜だ。インド洋の出入り口となるミャンマーは、中国にとって地政学的要衝の地だ。だからこそ、中国は大金を投じてミャンマー西部のチャオピューに港湾を整備し、雲南省と結ぶパイプラインを建設した。ダムや鉄道建設などインフラ整備にも余念がない。

 「自由で開かれたインド太平洋」構想を外交の柱に据えているわが国としても、インドと東南アジアの連結点に位置するミャンマーが中国に取り込まれるのは悪夢でしかない。

 なお西側で国軍とNLD双方に話ができるのは、わが国ぐらいのものだ。このままでは欧米諸国の制裁のムチが下される。それだと外国企業が投資をためらい、経済は衰退の坂道を転げ落ちていく恐れがある。ただでさえ新型コロナウイルス禍で経済が停滞を余儀なくされている中、打撃は大きい。

民政復帰を粘り強く説け

 国軍は兵舎に帰り、早急に事態収集を図らなければならない。疲弊するのは国家であり、そのつけを払わされるのは国民だからだ。

 圧力を控え、支援と対話によって民主化を促してきたわが国は、軍政回帰の愚を犯さず、民政に復帰するよう粘り強く説く必要がある。