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武漢封鎖解除、感染再拡大への懸念拭えぬ


 中国共産党政権は、世界で最初に新型コロナウイルスの感染が拡大した湖北省武漢市の封鎖措置を約2カ月半ぶりに解除した。しかし、武漢市の感染者についてのデータには疑問符が付く。感染再拡大への懸念は拭えない。

死者数は政府発表以上か

 封鎖解除の主要な目的は、人の流出を防ぐために運行を停止していた交通機関の再開だ。これで感染していない人は市外へ出ることが可能になった。

 中国政府の発表によると、武漢市では累計5万8人が新型コロナに感染し、このうち2572人が死亡した。感染者は中国全体の6割以上、死者は8割近くを占める。

 だが、統計に含まれない感染者や死者も多い。中国では3月末まで感染者数の発表に無症状者は含まれていなかった。武漢市の無症状の感染者数は「1万~2万人」との試算も出ている。

 また中国誌の報道によれば、3月下旬に武漢市内に8カ所ある火葬場の一つで、3500個の骨壺が準備されているのが確認された。政府発表よりもはるかに多くの人が亡くなった可能性が高い。

 トランプ米大統領も、中国当局が公表した感染者数や死者数について「いささか少なめの数字のようだ」と述べ、実態を反映していないとの見方を示している。中国のデータや情報には疑念がつきまとう。

 共産党機関紙・人民日報(電子版)は武漢市の封鎖解除を受け、封鎖が70万人の感染を防いだ可能性があるとする米科学誌サイエンスの論文を紹介。「武漢での素早い措置が、他国の防疫のために貴重な時間を稼いだ」と強調した。

 しかし、どれほど巧みに宣伝しても、感染拡大の原因が中国当局の情報隠蔽と初動の遅れだという事実を覆すことはできない。自らの責任を棚に上げ、国際貢献しているかのように振る舞うのは言語道断である。

 このほか中国では、外務省報道官がツイッターで「武漢市にウイルスを持ち込んだのは米軍かもしれない」などと主張し、米国の批判を浴びた。不誠実極まりない態度だ。

 新型コロナによる死者は全世界で10万人に迫ろうとしている。それでも、中国の習近平国家主席は謝罪するどころか、正確な情報の発信さえしようとしない。これでは、感染を拡大させた失敗から何も学んでいないということになる。情報隠蔽(いんぺい)は、2002~03年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の際にも見られた。中国の「宿痾」と言っていい。

 米共和党のサス上院議員は声明で「中国共産党は体制を守るため、これまでも、そしてこれからもうそをつき続ける」と糾弾している。中国共産党にとっては、人類の生命や健康よりも自らのメンツや一党独裁体制維持の方が重要なのだろう。今回の新型コロナ感染拡大は、こうした中国共産党の体質を改めて浮き彫りにしたと言える。

各国は警戒を怠るな

 中国のデータや情報が信頼できない以上、各国は警戒を怠るべきではない。日本も中国における情勢の推移を注意深く見守る必要がある。