トップ未分類時代を生き抜く力を養う 「探究的な学習」が学校教育の目玉に

時代を生き抜く力を養う 「探究的な学習」が学校教育の目玉に

文部科学省の『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編』から

加速する少子化と内需縮小が進む日本。今の子供たちが予測不能な未来を生き抜くには、グローバルな市場を開拓するとともに、多様な人材と力を出し合い、協働していくことが求められる。これまでの競争や試験といった従来の外発的な動機付けによる教育から脱却しなければならない。社会が求め、未来を背負う人材の育成には、文部科学省が掲げる自ら学びに向かう力を養う「探究的な学習」が必要な時代になってきている。(太田和宏)

児童・生徒が自ら課題設定

登本氏 「好奇心原動力に粘り強く」

さまざまな先端技術の発展、AI(人工知能)技術の急速な展開に伴い、先行き不透明な時代になってきている。今年小学校に入学した児童が大学を卒業する16年後には、今は存在していない職業に就いたり、仕事が無くなったり、多くの仕事がAIに取って代わられるような社会構造になっているかもしれない。

こうした時代を生き抜く力を身に付けるための授業が「探究的な学習」だ。クラス全員が先生に注目し、教科書の内容説明を理解し覚え、試験で解答するというのがこれまでの学習だった。これに対して探究的な学習は、あらかじめ決められた正解がない中で答えを考え出す活動を通して、導き出した結果をまとめ公表するだけでなく、どうやってそこにたどり着いたのかのプロセスが重視される。

近年、高校はもちろん、幼・小・中学校も含めた学校教育の目玉となっているのが「探究的な学習」だ。小・中・高校では「総合的な学習(探究)の時間」という科目が必修となり、それ以外の教科・科目、各種活動においても探究的な学習が行われるようになってきた。

探究的な学習において先生が悩むことは、何のために評価を行うのか、成長につながる「評価」をどうすればよいのか、背景をどう説明すればよいのかという点だ。

■日常生活や社会に目を向け、生徒が自ら課題を設定する■①課題の設定②情報の収集③整理・分析④まとめ・表現の過程を経由する■自らの考えや課題が新たに更新され、探究の過程が繰り返される――というのが探究学習のループだ。

東京学芸大学准教授の登本洋子氏は株式会社InspireHighのインターネット講演会で「文部科学省の表現とは多少異なるが、“跳び越したり”“後戻り”をしてもよく、臨機応変に行き来できる形が理想的だ」、また「入り口でやる気を起こさせる」ことも必要だと語る。

学びの自由度が高いが故に、探究的な学習の成果をどう評価するかは難しい。「よい」の基準が幅広いからだ。例えば、とても独創的なアイデアの作品と、自分や周囲に大きな影響をもたらした作品、学術的な論文の書き方が優れている作品はどれも高く評価されるべきだが、それらを一律の基準で評価し優劣を付けることはできない。

登本准教授は独自のルーブリック(評価基準表)を示しながら評価について語った。「課題の設定」では、■知識技能の面で十分持っている、持っている、不十分であるの3段階に。■思考力・判断力・表現力、では十分に説明され、的確に表現されている。■主体的に学習に取り組む態度では、強い関心を持ち、より良い問いになるよう試行錯誤している。試行錯誤が十分でない。■提出期限について計画通り取り組み、提出期限に遅れがない、3日程度の遅れがある、3日以上の遅れがあるの3段階に分けている。

「情報の収集」においても同様な視点で3段階の評価基準を設定している。

ルーブリックは最後の評価段階で持ち出すのではなく、どこに目標を置いているのか、個々の学校・学年で目指す指標を話し合い、「児童・生徒たちにどのようになってほしいのか」を、何年かかけて決め、児童・生徒の学習の振り返りにも用いることが必要だ。

多くの先生が苦労するのが評価と共に、児童・生徒のやる気をいかに導き、育むかという点だ。児童・生徒たちはいろいろな特性・個性を持っており、全員を一つのくくりとして授業を進めることはできない。

登本准教授は「好奇心を原動力にし、粘り強く探究学習に取り組んでもらいたい」と語り①生徒が自走できるようにすることを中心に②部活動以外に「取り組んだ!と言えるものにする③真剣に取り組めば、生徒のキャリア選択に影響する。進路の具体化。大学生活以降の学びにつながる④「調査書」に記載されることも早めに示す。探究学習を活用した入学試験⑤数年たつと生徒の事例が次の生徒を動かす――ことになると指摘した。

(画像は講演会の資料から)

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