ヒズボラ、イスラエル北部を砲撃 司令官殺害に報復 ハマス急襲後最大規模

レ バ ノ ン 国 境 近 く に 展 開 す る イ ス ラ エ ル 軍 = 2 0 2 3 年 12 月 10 日 ( U P I )
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが12日、イスラエル北部に向けて多数のロケット弾を一斉に発射した。パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスによるイスラエル急襲以来、最大規模の攻撃となった。ヒズボラは上級司令官がイスラエル軍の攻撃によって殺害されたことに対する報復だとしており、イスラエルとレバノンの国境沿いで緊張が高まっている。(エルサレム森田貴裕)

イスラエル軍が11日夜、レバノン南部のジュアイヤ村を空爆し、ヒズボラの司令官1人と戦闘員3人が死亡した。標的となったのは、ヒズボラの南部戦線司令官タレブ・アブドラ氏で、ここ8カ月間でイスラエル北部地域の市民や軍の施設を狙った数多くのテロ攻撃を計画・実行してきたとされる。アブドラ氏殺害に対してヒズボラは翌12日、報復としてイスラエル北部へ向けて215発のロケット弾を一斉発射し、対イスラエル攻撃を強化すると警告した。ほとんどのロケット弾は迎撃されたが、一部がイスラエル北部に着弾し大規模な森林火災が発生した。

ヒズボラは、昨年10月7日にハマスがイスラエル南部を襲撃した翌日から、ハマスを支援するとしてイスラエルに向けてロケット弾や対戦車誘導ミサイルを発射し、ドローン(無人機)も使い攻撃を始めた。ヒズボラもハマスもイランから軍事支援を受けており、米英など複数の国からテロ組織に指定されている。ヒズボラの攻撃に対しイスラエル軍は空爆や砲撃で応戦。イスラエルとレバノンの国境沿いではほぼ毎日、攻撃の応酬が続いている。レバノンではこれまでにヒズボラや他の武装組織の戦闘員ら400人以上が死亡、民間人70人以上が犠牲となった。イスラエル側でも兵士18人と民間人10人が死亡した。イスラエル北部の国境沿いの地域住民6万人以上が依然として避難生活を余儀なくされている。レバノン南部の住民の多くも家から離れている。

イスラエルはこれまで、多方面戦争に備え大規模な軍事演習を行ってきた。ただ、現在ガザ地区でハマスと戦闘を続けているイスラエル軍は、二つの戦線で同時に戦うことを避け、ヒズボラの上級司令官などを標的とした局地的な攻撃に留(とど)めている。

イスラエルのバル・イラン大学政治学部教授で軍事戦略と諜報の専門家であるエヤル・ピンコ博士は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、「全面戦争に突入すればイスラエル中部に向け毎日数千発のロケット弾が発射され、死傷者が相当数出ることを軍は恐れている」と語った。ピンコ氏によると、軍は兵站(へいたん)面で準備が整っておらず、軍事演習を実施するにも兵力が不足しているという。

さらに、国家監査官による報告書では、イスラエル国内での国民用の防空シェルターなどインフラ不足を指摘しており、全面戦争への備えが不十分だと警告している。全面戦争に突入した場合、イスラエル軍の防空システムが強固でも、テルアビブなど都市部でロケット弾集中砲火とドローンを使った攻撃の全てを撃退することは困難との見方が強く、保健省によると、イスラエルの医療制度は崩壊し、長時間の停電が常態化する可能性があるという。

イスラエルは、イランの代理勢力であるヒズボラを最も深刻な脅威と見なしている。ヒズボラは推定で15万発以上のロケット弾、数千発の精密誘導ロケット弾、さらに攻撃用ドローンを保有しているとされる。中東全域のイラン代理勢力を監視するイラン革命防衛隊の遠征部隊である精鋭「コッズ部隊」の関係者は、米国の外交専門誌「フォーリン・ポリシー」で、ヒズボラの武器庫には精密誘導ミサイルや改良型カチューシャ・ロケット砲、対戦車ミサイルなどさまざまな種類のロケット弾約100万発が保管されていると述べている。

イスラエルの極右指導者は、北部国境地域の治安回復のためヒズボラとの全面戦争を開始するよう呼び掛けているものの、イスラエル政府は交渉を通じてヒズボラに国境から撤退するよう求めており全面戦争は望んでいない。ヒズボラも全面戦争には消極的だ。

イスラエル北部国境沿いでのヒズボラとイスラエル軍の攻撃の応酬は、ガザ地区での戦闘が終結するまで続く可能性がある。

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