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沖縄空手の魅力や奥深さ 広く発信

ユネスコ遺産登録へ シンポジウム開催

シンポジウムの参加者ら。右から宮本亜門氏、玉城デニー氏、アンドレア・クレメンティソバー氏(上)と、「型」を披露する上地流門下生(下)=10月14日、沖縄県浦添市の国立劇場おきなわ

沖縄の文化である伝統空手を次世代に正しく保存継承するため、ユネスコ(国連教育科学文化機関)無形文化遺産に登録することを目指す、沖縄空手ユネスコ登録推進協議会はこのほど、沖縄県浦添市内でシンポジウム「歴史を知り、未来を掴め!沖縄空手で拓く新時代~ユネスコ無形文化遺産への道~」を開催した。県内空手家に加え、演出家の宮本亜門氏らを交えてトークセッションが行われ、沖縄空手の持つ魅力や精神性の奥深さについて語り合った。(沖縄支局・川瀬裕也)

「空手精神に感動し作品化」 演出家の宮本亜門氏

上地流門下生らの「型」の演舞も

空手は2020年東京オリンピックで追加種目に選ばれるなど、近年世界中で注目が高まっている。競技人口は全世界で約1億3000万人いるとされ、格闘技の中でも屈指の人気を誇る。空手発祥の地・沖縄では多くの人々が日々鍛錬を積んでいる。争いを回避することを目的とした護身の武術とされ、沖縄においては、伝統的な「型」の習得・継承が特に重視されており、護身術や競技の枠を超えて、精神修行の一環として学校教育にも取り入れられるなど、大きな役割を担っている。

この伝統空手を国内外に正しく広く発信するため県は14年、ユネスコ無形文化遺産への登録を念頭に検討委員会を発足。20年には同登録推進協議会が立ち上がり、各種イベントや広報活動を続けている。

「型」を披露する上地流門下生(下)=10月14日、沖縄県浦添市の国立劇場おきなわ

これらの活動の一環として開催された今回のシンポジウムでは第1部でトークセッションが行われた。主催者代表として参加した玉城デニー沖縄県知事は冒頭、沖縄空手について「武道の色合いもあるが、神聖な『祈り』や『伝統』に近いものがある」と語り、「(年中行事や祭など)さまざまな要素が空手とつながっている」ことが、「ユネスコ登録に大きな力となる」とアピールした。

空手をモチーフにした映画『ベスト・キッド』(1984年)をミュージカル化した『カラテ・キッド』の演出に携わった宮本氏は、「沖縄の町を歩いていると、多くの道場を見掛ける」といい、「年齢に関係なく、子供たちからお爺(じい)ちゃんまで鍛錬している」として、「生活の中に空手が入っている」ことを感じるといい、ユネスコ登録を目指す意義を強調。

『カラテ・キッド』製作のきっかけを尋ねられた宮本氏は、空手の基本精神である「空手に先手無し」や、「人に打たれず人を打たず、全て事なきを基とするなり」を聞いた時、「相手のことを思いつつ、倒すとか、勝ち負けではない精神がこれだけ明確になっているものが他にあるか」と、「鳥肌が立つほど感動した」と振り返った。

5歳から空手を始め、現在は県内で「剛柔流」指導者として活躍するスロバキア人のアンドレア・クレメンティソバーさんは、「空手は体を磨くことと、心を磨くことが非常に大切だ」と話し、空手を教える側も学ぶ側も、相手を尊重する姿勢があるといい、沖縄の方言「いちゃりばちょーでー(一度会えば兄弟のように仲良くなる)」の精神を感じると話した。

またアンドレア氏は、空手の「型」について、「空手には素晴らしい歴史があり、その歴史は『型』に集約されている」と主張。「100年前の技術が今も残っていることは素晴らしいし、今の経験や知識を100年後に伝えることができる」と魅力を語った。

宮本氏も続けて、「礼に始まり礼に終わる」精神は、沖縄がさまざまな国や文化との関わりの中で育んできたものだとして、「(対戦)相手を人として尊敬することができるのは、(武術として)とても成熟している証し」と評価した。

玉城氏は、空手の魅力について、「事なきを良しとする。相手と対峙(たいじ)した時『この人と闘ったら負ける』と思わせれば、手を出されないことと同じだ」と例を挙げ、「お互いが緊張感を持っていれば争いは起こらない」との教えが伝統の中に込められていると語った。

第2部では実際に、沖縄三大流派の一つ「上地流(うえちりゅう)」の門下生らによる型の演舞が行われた。また上地流指導者の松崎賀充氏による実戦形式の組み手や、木材割りなどのパフォーマンスも披露され、観客らは熱心に見入っていた。

会場に訪れた空手歴20年という30代男性は、「(沖縄空手には)相手を敬い平和を願う沖縄独自の『守礼の心』が根付いている」と自慢げに話した。

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