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東大五月祭ROJE教育フォーラム 「個別最適な学び」の核心に迫る

NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)主催の教育フォーラムが3年ぶりに対面とユーチューブ上でZoomを使った形式で開催された。初等・中等教育の改革が実施される中、今年の五月祭では「『個別最適な学び』の核心に迫る~ひとりひとりに向き合う教育のこれから~」と題してフォーラムが行われた。株式会社LITALICO代表取締役・山口文洋氏の発言要旨は次の通り。
(太田和宏)

生きづらい環境でも自分らしく生きる

株式会社LITALICO代表取締役 山口文洋氏

「学びたい」時に学べるツールを開発

学校教育の真ん中ではなく、一歩外の立場からキャリア教育、ICT(情報通信技術)も含めた教育環境がどうあるべきか、どう変わり得るのかという点について考え、後方支援するような立場でビジネス経験を積んできた。リクルートで大学を出たばかりの20代の社員を相手に人材育成・人材開発を15年くらいやってきた。

人生のベースとなる価値観が皆一緒ということではなく、皆違っていていい、と思っている。好きなこと、ハマったことがあるのに、皆でこれをやって、というところに馴染(なじ)めない時期があった。「合わせなきゃいけない」のか「違っていていいのか」という課題に直面した時、「違っていていいんだ」という結論に至った。

山口文洋氏

学校の一斉授業で取り残されても、「学びたい」と思った時に学べるという、学校以外のツールがあってもいいのではないか。リクルートで小学生から高校生まで月額1000円~2000円払えば学べる「スタディサプリ」という基礎教育学習アプリを作った。

今は学びたいけど、学びづらい環境にある人、自分はちょっと他とは違っていることで生きづらかったり、働きづらかったりという人が社会の中で自分らしく生きられるという関係インフラを構築したいと思い、今は、株式会社LITALICOというところに身を置いている。

自分らしく生きるには、まず、自分の好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、難しいこと、没入できること、自分の存在価値が分かる、などという「自己認知・肯定感」を人生の早い時期に持つことが大事だ。

好きなこと、強みを持って他者貢献性という面で嗜好(しこう)性だったり、専門知識やスキルを身に付けていく「認知能力」も大事。また、多様化が進む社会の中で他者とも認め合いながら、他者と自分との立ち位置、自分の役割、自分らしく動ける「非認知能力」も求められている。これらをバランス良く行える人が自分らしく生きられる人だと思う。

教育の場でこうした原体験をどれだけ積んでいけるか。リクルートという会社で人材育成に携わって体験してきたことは、自己探求と他者からのフィードバックが大きな意味を持つことだと気付いた。コーチとかメンター、1on1の時間をかけてもよいのではないか。他者からのフィードバックで気付けることも多くある。

皆で集まる学校、社会の中、多様なコミュニティーの中で自分らしさを見つけ、何か、目標に向かって、成功・失敗を繰り返しながら、成長していける場が必ず必要だ。部活や探究学習の最中に、全員がリーダーになれ、ということではなく、目立ちたがり屋がいたり、控えめな人がいたり、いろいろな人がいる。子供たちには、チーム活動を通して、自分らしくいられる場をどうつくるのか。学校の環境の中でバランスの良い生き方を模索してほしい。

学校カリキュラムとしてはこれまで、知識の習得に時間を費やしていた。学習生産性を考えると、この時間を何とか圧縮できないか。みんなレベルが違う児童・生徒に対して、同じ授業をしていてよいのか。学習生産性ってあるのか。学力・習熟度に合わせた個別最適な学習を圧縮して行うことが大事だ。

学習ツールが、まだ未完成な部分もあるだろうが、ティーチャーとか知識の習得の部分はICTとかに譲ってもいいのではないか。そして、学校の先生にはコーディネーター、ファシリテーターとしての役割があるのではないか。

テクノロジーをどのように使うかについて、オンラインカルテ、ポートフォリオ、オンライン適性、アセスメントなど小学校から中学校さらに高校と学校をまたいだり、学校の中でも担任が代わる時に口頭・紙ベースではないもう一段上の情報管理が必要な時代に来ている。オンライン学習では、今いろんなオンライン学習機能を持ったツールが出てきている。児童・生徒が自分に合ったものを選択して学んでいければよいと思う。

非認知能力においては、1学年百数十人(2~3クラス)しかいない。男子校女子高もある。同い年の学年が探究学習や部活などダイバーシティーでインクルージョンな体験を積み重ね、Zoomなどを利用して多文化・多人種とのコミュニケーション、役割・立ち位置を持った原体験を積み重ねてほしい。テクノロジーが時間・エリア・場所を超えて役立てられるのではないか。

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