作家の万城目学さんの人気作品を映画化した『プリンセス トヨトミ』が公開されたのは2011年の東日本大震災の直後で、当時の重苦しい空気を幾分か和らげた。
1615年の大坂夏の陣で断絶したとされる豊臣家が「大阪国」として今に続き、それを大阪の男たちが密(ひそ)かに守ってきたが、東京から来た政府の役人がその正体を暴こうと「大阪国総理大臣」と攻防を繰り広げる。大阪弁で言えば、けったい(奇妙)なストーリーだった。
先の統一地方選挙で大敗を喫した自民党大阪府連を党本部が「直轄管理」に置くとの報道があるが、これもけったいな話だ。和歌山県での衆院補選では岸田文雄総裁らが次々と応援に入り「和歌山のことは和歌山で決める」と叫んでいたのに、なぜ「大阪のことは大阪で決める」と言えないのか。
もっとも大阪自民党の自浄能力は疑わしい。中選挙区時代には定員5人に公認候補を1人しか立てられず、おまけに他党の後塵(こうじん)をしばしば拝した。小選挙区制では公明党票に依存する「保身」が際立った。
大阪維新の会が登場すると、2015年の大阪府・市のダブル首長選挙では共産党と反維新連合を組み、今回の府知事選では名うての左翼学者の神輿(みこし)を担いだ。これでは保守層がけったいな話だと離反する。
『トヨトミ』では大阪人の気骨が勝り、役人は知らんふりして帰京した。大阪自民党にそんな気骨があるか。維新の趨勢(すうせい)も左右するだけに成り行きを注視したい。