山猫の立体作品は最優秀賞を受賞
秋田県特別支援学校文化祭の第20回「わくわく美術展」がこのほど、秋田市にぎわい交流館で開かれた。県内では幼稚部から高等部まで16校に約1300人が在学。今回は約900点の応募から、絵画105点、立体造形などの自由制作40点が展示された。主催は特別支援学校文化連盟の美術部局。
全体的に、形や色使いなど伸び伸びとした作品が多い。
絵画の最優秀作品「かんとうをもち上げている子ども」(中学部1年)は、人物に焦点を当て躍動感いっぱいに表現。竿燈(かんとう)の竹がしなって空高くまで伸びている。
宮沢賢治の『注文の多い料理店』から着想を得たという立体作品(秋田きらり支援学校、高等部3年の2人合作)は、山猫の大きな口が今にも人間をのみ込みそうで迫力があり、自由作品部門で最優秀賞を受賞した。
美術展を担当する教師の一人は語る。「つたない中で、それぞれの表現方法に独自性があり、個性が際立っている。教師は違いを丸ごと受け入れる姿勢でいます。もともと違うのが当たり前で、障害の程度も違う。駆けっこでも用意ドンして早い子もいれば、途中で倒れる子もいる。それと同じです。絵がうまい、下手ではない。逆に、色使いやタッチはまねできない作品があったりする」
一方、自由部門では、膨大な卵のパックを積み重ねた「タイムカプセル」(栗田支援学校の高等部2年の合作)が目を引く。審査員は講評で「3人で制作していて驚いた。何日かかったのだろう。中を見るとひとつひとつのパーツが全て異なっている。毎日いろいろな気持ちで制作したのだろう」と高く評価した。
審査に当たった秋田大学大学院教授は講評の中で「私たちはどうしても写実を好み、それができるようになりたいという気持ちが強いものです。それ自体は悪いことではありません。しかし、人間にはさまざまな表し方があることを知ってほしいと思います。美術の時間は苦しいだけ、という思いのまま卒業してほしくありません」「たとえひとつのやり方であっても、それを何十年も続けられたとしたら、そのやり方に出会えた人は『幸運』です」と述べている。
(伊藤志郎)