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曲線生かし“豪華客船”に変身 石川県立図書館がリニューアル

円形劇場のような石川県立図書館

石川県立図書館が今夏、リニューアルされた。外観は従来の箱型だが、中に入るとこれまでの図書館のイメージはなく、高さ15㍍の円形の曲線空間に包まれ、まるで豪華客船のよう。壁や床は伝統色の加賀五彩が使われ、ソファも同系色で落ち着いた色彩になっている。書棚は低く、本の分類にも工夫が凝らされ、まるで「本のテーマパーク」に入ったようだ。(日下一彦)

館内は伝統色の加賀五彩を採用、落ち着いた雰囲気に

低い書棚、本の分類も工夫

新しい図書館の名称は「百万石ビブリオバウム」。「ビブリオ」とはイタリア語で図書、「バウム」はドイツ語で木を意味する。さまざまな本や人との出会いを通じて「県民の成長を後押しし、進化を続ける図書館であってほしい」(県担当者)との期待が込められている。

これまで中心街にあった旧図書館が老朽化したため郊外に建て替えられ、規模も設備も大幅にパワーアップした。場所は金沢大学工学部跡地(小立野2丁目)で、兼六園から南東に1・5㍍余り、バスが頻繁に走っているので利用しやすい。

外観は本をめくるイメージで、一部がよれており斬新だ。「思いもよらない本との出会いや体験によって、自分の人生の一ページをめくることができる場所」をコンセプトに、環境デザイン研究所の仙田満氏が担当した。仙田さんは東京辰巳国際水泳場などを設計している。

地上4階、地下1階建て。外壁に大地のブラウンと自然のグリーンのタイルを市松模様に配置し、周囲にすっかり溶け込んでいる。玄関を入ると、まるで国際線のロビーにでもいるかのよう。天井が高くて広く、周囲が見渡せるので片隅に立っていると、いつの間にか自分がここの主役になったような気分になってくる。不思議な感覚だ。内装には県内産のヒバが使われ、木目が生かされている。

カウンター前の壁面には、伝統工芸の盛んな土地柄を生かし、文化勲章受章者や人間国宝ら県を代表する名匠たちの作品が、鮮明な映像パネルで展示されている。それを見ていると、まるで美術館のようだ。従来の図書館ではあまり見られない空間を演出している。

床や壁面、ソファに使われている色は、落ち着いた加賀五彩。方角ごとに東は「草」、西は「黄土」、南は「臙脂(えんじ)」、北は「古代紫」に色分けされている。慣れてくると、壁や床の色の違いで、自身の立つ位置が分かってくる。迷路のような館内でも、色の違いから自身の位置がおよそ見当がついてくる。県民にとっては伝統色と触れ合える心憎い演出のようにも感じられる。

従来の図書館にはあまり見られない仕掛けも幾つかある。図書館と言えば「静粛」が原則だが、ここでは開架エリアでのおしゃべりがOK。館内がやたらと広いので、多少のおしゃべりは気にならない。それでも静かに読書に集中したい人は、別にサイレントルームがあり、館内端末で予約するとランダムに席が割り当てられる。席数は26席と少ないが、書棚周辺にはソファがたくさん並んでいるので、そこだけで十分だろう。

開架図書は30万冊を数え、全国有数の規模。うち7万冊はテーマごとに並んでいる。その並べ方にも特徴があり、「本と出会う12のテーマ」と名付けられ、「暮らしを広げる」「好奇心を抱く」「身体を動かす」などがある。関連するテーマごとにジャンルにこだわらない本が並び、教養の視野が広がっていく。

新図書館の目玉になっているのが、「こどもエリア」だ。屋内外合わせて約2000平方㍍と広く、書架を対象年齢別に緩やかにゾーニングし、大小さまざまな形状の家具や遊具なども備えて、まるで遊び場のような空間だ。ハンモックでぶら下がって読書したり、一人空間で誰にも気にせず寝転んだりと自由に利用できる。秘密基地を連想させる狭い空間もあり、子供たちにはたまらないだろう。閲覧エリアと共に、文化交流エリアもある。ここでは学習や読書、デスクワーク、簡単な打ち合わせなどで利用できる。

文化振興課では、「行列ができる図書館を目指しています。本を通じて、いろいろな体験をしてもらいたい。にぎわいあふれる図書館にしたい」と話している。

開館時間は、閲覧エリア=9~19時(土曜・日曜・祝日は18時まで)、文化交流エリア=9~21時(土曜・日曜・祝日は18時まで)。月曜休館。

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