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次世代に北方領土への関心高めたい

北海道が動画や作文コンテスト実施

語り部・倉賀野弘行氏(中央奥)による講演が行われた「北方領土セミナー」

ロシア政府は9月5日、北方四島とのビザ(査証)なし交流や自由訪問など北方領土における日本政府との合意事項を一方的に破棄するなど、ロシアによるウクライナ侵攻は北方領土返還運動に大きな影響を及ぼしている。そうした中で北海道は返還運動に向けて次世代を担う若者に関心を高めてもらおうと、動画コンテストや中学生を対象とした作文コンテストを実施するなど地道な取り組みを続けている。(札幌支局・湯朝 肇)

対策本部「地道な取り組み必要」

ロシアのウクライナ侵攻に絡め 語り部の倉賀野氏が不当性訴え

「このセミナーは、北方領土について知ってみたい、元島民の方々がかつて島でどんな生活をしていたのか、どのようにしてロシアは北方四島を不法に占拠していったのか、など北方領土の語り部さんから話を聞ける貴重な機会です。同セミナーを通して北方領土への関心を持っていただければと思います」――こう語るのは北海道総務部北方領土対策本部の松下真鈴主任。

7月26日、札幌市内で開かれた「北方領土セミナー」では、北方領土の概略をDVDで上映。その後、公益社団法人千島歯舞諸島居住者連盟に所属する語り部の一人、倉賀野弘行氏が40分ほど講演した。

倉賀野氏は母親が歯舞群島の多楽島の出身で元島民2世になる。同氏はこれまで元島民に直接会い、戦前に暮らしていた島の様子や終戦直後、旧ソ連軍が日ソ中立条約を一方的に破棄して元島民を強制的に追い出したことなどを聞き取り、語り部として歩んできた。この日のセミナーでは、故郷である多楽島について説明。

「歯舞群島の北にあり島の周囲が20㌔の小さな島。島全体が平坦な地形で当時は231世帯、1500人ほどが生活していました。コンブ漁やサケ漁が盛んで一つの物でも皆で分かち合って使うなど、皆顔見知りで平和な暮らしをしていました」と語る。

さらに「旧ソ連軍が侵攻してきた時は、ソ連の軍人は強奪を繰り返し、非常に恐ろしかったといいます。日本の軍人たちは大陸に連れて行かれました。そのうち、旧ソ連軍は島の住民に対して強制的に退去を命じ、仕方なく北海道に渡ったといいます。旧ソ連軍のしたことは現在のロシアのウクライナ侵攻と全く同じだと私は思います」と倉賀野氏は旧ソ連軍の不当性を訴える。

同セミナーは北方領土対策本部の北方領土「中学生の声」発信事業の一つとして企画されたもので、「中学生を参加対象とし、北方領土『中学生作文コンテスト』の題材に活用していただくことを想定して開催しています。もちろん、セミナーへの一般人の参加も可能です」(松下氏)という。

このコンテストは2016年度から行われている。ちなみに昨年度は道内19の中学校から256作品が寄せられた。最優秀賞には根室市立光洋中学校3年(当時)の近藤妃香さんが選ばれ、その作品は同対策本部のホームページにアップされている。7回目となる今年度は10月31日までが応募の期間。テーマは「北方領土について考えたこと、北方領土の行事に参加して感じたこと、書籍・映像・映画等で学習したことなど北方領土に関するものであればテーマは自由」となっている。

一方、北方領土対策本部では中学生作文コンテストの他に昨年度から北方領土動画コンテストを実施。こちらのコンテストは対象が小学5年生から一般人まで。また道内だけでなく道外に住む人と幅広い。テーマは①北方領土に関すること②根室市や別海町・中標津町・標津町・羅臼町など近隣市町の魅力を発信するもの――となっている。

スマホやパソコンなどを媒介に動画配信が一般化される中で、動画を利用して北方領土および隣接地域への関心を持ってもらおうというのがこの企画の狙い。最初のコンテストとなった昨年度は全国から56作品が届き、その中から道立名寄産業高校放送局の作品が選ばれた。今年度の応募期間は11月11日までとなっている。

北方領土対策本部は「ロシアによるウクライナ侵攻で北方領土と北海道の交流は遠のくばかりだが、北方領土返還に向けて地道な取り組みが必要だ」としているが、何よりも日本人一人ひとりが北方領土への関心を持ち続けることが肝要であることは間違いない。

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