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日本近代文学 名作発見の旅の最新記事

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孤独な心癒した尾道の風光 『東京物語』誕生の背景にもー志賀直哉『暗夜行路』前篇

 『暗夜行路』は、「小説の神様」志賀直哉が25年近い歳月をかけて完成させた唯一の長編小説である。祖父と母親の間に生まれた不義の子という暗い宿命を背負う主人公・時任謙作が、その宿命に抗(あらが)いながら生きていく姿を描いている。

弱き信仰者のための文学 “受難の長崎”で踏絵と出合うー遠藤周作『沈黙』

遠藤周作(1923~96年)が「神の沈黙」という宗教や信仰を超えた根源的な問いに切り込んだ小説『沈黙』。この作品が生まれたのは、遠藤が仕事の合間にふらりと訪れた長崎で偶然「踏絵」を目にしたことがきっかけだった。

老舗旅館2軒の対立と和解 「松坂屋」の家族をモデルにー獅子文六『箱根山』

作者・獅子文六が興味を引かれたのは「ケンカばかりしている山のこと」だったが、魅力的だったのは箱根の歴史。修験道の発達、関所の開設、文人たちが集まった芦之湯の東光庵…。

民間伝承を文学に昇華ー柳田國男『遠野物語』

『遠野物語』は、柳田國男が岩手県遠野出身の佐々木喜善から聞いた郷土の伝承を簡潔な文語体でまとめ明治43年に発表したもので、日本民俗学の先鞭(せんべん)をつけた傑作である。

戦中派の微妙な心理ー阿川弘之『鮨』

『山本五十六』『米内光政』『井上成美』の海軍提督三部作をはじめ、海軍物の評伝が代表作の阿川弘之は、文壇デビューの頃から短編の名手でもあった。「新潮」平成4年1月号に発表された『鮨』は、著者最晩年の短編。若い頃とは違う円熟した味わいの名編だ。

薩摩隼人が生きた城下町ー司馬遼太郎『翔ぶが如く』

「濃い群青の錦江湾に浮かぶ桜島の山容とその色彩が、どの名陶をも見すぼらしくさせてしまうほどの凄みをもって迫ってくる」と、司馬遼太郎は桜島の感想を残した

青年たちの結婚巡る悲劇ー遠藤周作『さらば、夏の光よ』

<お茶の水駅で下車して、改札口に近い構内の電気時計を見る時は、必ずといっていいほど、針は十時を十分ほどすぎていた>小説の登場人物の一人、遠藤周作先生はB学院の講師で、フランス文学の授業を担当している。「また遅刻をしたな」と思いながらも、足を早めることはせず、静かな屋敷町に向かって歩いていく。

敗戦でも滅びぬ日本の美ー川端康成『山の音』

日本の敗戦の悲しみに沈んでいた川端康成は昭和24年、再び本格小説の筆を執り、『千羽鶴』と『山の音』の2作に取り掛かった。どちらも名作の誉れが高いが、特に『山の音』は、「戦後の日本文学の最高峰に位するもの」(新潮文庫、山本健吉解説)とまで言われる。

淡く切ない恋を清冽に モデルの地、鶴岡市に点在ー藤沢周平『蝉しぐれ』

藤沢周平の長編時代小説『蝉しぐれ』は、下級武士の家の養子となった主人公・牧文四郎が隣家の娘・小柳ふくの蛇に噛(か)まれた指から毒を吸い取るという冒頭の章「朝の蛇」から始まる

深川で迎えた人生の転機 新たな句境求めて旅路にー中山義秀『芭蕉庵桃青』

隅田の長江に鱸(すずき)のをどる、初秋の季節となつた。天地がにはかに明るく、ひろびろとしてきた感じである。芭蕉は読みかけの冊子をそのままひとり、文台によつて長江にむかつて舟のゆききを眺めてゐる。なかば放心のていで、時たつてもその姿勢をくづさない

昭和の銀座にタイムスリップ 築地川は道路と公園にー三島由紀夫『橋づくし』

今年生誕100年を迎える三島由紀夫は、短編でも優れた作品を多数残した。中でも評論家の奥野健男が「憎らしいほど巧みな小説」と評するのが、銀座・築地界隈(かいわい)を舞台にした『橋づくし』だ

文豪に愛された団子坂 言文一致で近代小説を牽引ー二葉亭四迷『浮雲』

二葉亭四迷(ふたばていしめい)(1864~1909年)の代表作『浮雲』の登場は、日本文学史における事件だった。

祖霊が鎮まる山の麓で 生と死、自分を見詰め直すー森敦『月山』

1974(昭和49)年に芥川賞を受賞した森敦の小説『月山(がっさん)』は、山形県朝日村(現鶴岡市)にある真言宗注連寺(ちゅうれんじ)に滞在した彼の実体験を基に書かれた。森は鶴岡市内にある別な寺の住職から紹介され注連寺を訪れる

番頭修行の晴れ舞台江の島ー井伏鱒二『駅前旅館』

この小説の主人公は上野駅前にある柊元(くきもと)旅館の番頭だ。 <名前は生野治平と申します。生まれは能登(のと)の輪島、早くから在所を離れました。六つのとき、お袋が事情があって私を東京へ連れ出して、駅前の春木屋という旅館に身を寄せました。>

明治青年の人生哀切にー田山花袋『田舎教師』

田山花袋(たやまかたい)の代表作の一つ『田舎教師』の冒頭である。文学趣味を持ち向学心にも富みながら、結核を患い田舎の代用教員として短い生を終えた青年が主人公。日露戦争の時代を背景に関東平野の自然や風物を丹念に描きながら、主人公(林清三)の哀切な人生を浮かび上がらせている

年始客避け旅に出た漱石ー夏目漱石『草枕』

研究者によれば、漱石が五高(現熊本大学)の英語教師に赴任していたのは、明治29(1896)年4月から33年4月。そして、熊本からこの小説の舞台となる小天(おあま)温泉(玉名市天水町)に旅行に行ったのが、明治30年の12月末だった

昭和初期の雪国文化綴るー川端康成『雪国』

川端康成(1899~1972年)の小説『雪国』は、モデルとなった新潟の温泉地がある。東京から約1時間で行ける湯沢町だ。都内から日帰りで行けるスキー場として冬のシーズンは特ににぎわう。JR東京駅で上越新幹線「とき」に乗りしばらくすると、群馬と新潟の県境にまたがる三国(みくに)山脈のトンネルに入る

無垢な魂を持ち続けた歌人ー大佛次郎 『源実朝』

源実朝は鎌倉幕府を開いた父・源頼朝の次男で、母は頼朝の妻・北条政子。12歳で征夷大将軍に就き、成長するにしたがって政治に関与したが、右大臣に任ぜられた翌年、兄・頼家の子、公暁により鶴岡八幡宮で暗殺された。傑出した歌人でもあった

「無縁坂の女」に寄せる愛惜-森鷗外『雁』

古い話である。僕は偶然それが明治十三年の出来事だということを記憶している。どうして年をはっきり覚えているかというと、その頃僕は東京大学の鉄門の真向かいにあった、上条という下宿屋に、この話の主人公と壁一つ隔てた隣同士になって住んでいたからである

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