●怒りは「破壊衝動」になる
仲の良い家族は、互いに「感謝する心」を持ち、仲の悪い家族は、互いに「怒り」を持っています。
怒る人とは、怒鳴り散らすような気性の激しい人もいれば、怒りを心の中に抑え込んでイライラしたり、黙り込んで不機嫌になったりする人もいます。
その怒りは、いずれも「破壊衝動」を持っています。怒りが人に向いたら、暴力・暴言・無視など「攻撃的・否定的な言動」になります。自分の体に向いたら、喘息、アトピー、胃潰瘍、頭痛など「心身症」になり、自分の心に向いたら、妄想、幻聴、幻覚など「うつ的症状」になったりします。他にも、過食や拒食などの「摂食障害」、アルコールやギャンブルへの「依存症状」として表れる場合もあります。
また、怒りを持つ人は、自分の価値観や期待や理想を基準とした「~をすべきだ」「~になるべきだ」という「べき論」を強く持ちます。それに合わない相手を見ると怒りが込み上げ、自分に向いたら自己肯定感が極端に低くなり、自信を失うことになります。
怒りを感じる相手が「上司・親・社会」などの場合、自分の方が立場的に弱く抗議しにくいものです。半面、怒りをぶつけやすい相手は、「部下・年下・子供」など、自分よりも弱い立場の人であることが多くなります。家庭の中では、親が仕事のストレス、夫婦喧嘩などによる悩みや不安から形成された怒りを持っている場合、その怒りを子供が受けることになります。子供にとって最も傷つけられるのは、「親の怒り」です。
●「怒りを持った親」の養育態度
怒りを持った親の養育態度は次のような特徴があります。
第一は「子供の個性の否定」です。子供をあるがままに受け入れることができず、理想の子供像を子供に押し付けます。
第二は「無関心」です。親が自分の精神的葛藤の処理に忙しく、子供に関心を持つ余裕がありません。
第三は「過干渉」です。親自身の葛藤やコンプレックスを、子供を使って解消しようとして過度に干渉します。
第四は「心の交流・共感欠如」です。子供と一緒に楽しいことをしないし、できません。親自身が喜んでいないので、子供と一緒に遊ぶどころか、楽しく遊んでいる姿を見ると不機嫌になります。
第五は「親子逆転現象」です。子供を自分の慰め役にしたり、同情させたり、自分から離れないように支配します。無自覚のまま子供の自立を妨げるということです。
第六は、「子供に対する嫉妬」です。不幸な生い立ちの親は、子供が自分よりも幸せに見えると嫉妬します。子供が幸せそうに見えると意地悪をして、自分よりも不幸に見えると、一変して親切に優しくなります。
このような怒りを持った親は、子供の幸せを願ったとしても、深層心理では不幸を願う結果になります。このような怒りをぶつけられて育った子供が思春期になると、反対に親に向かって怒りをぶつけることになります。次回は、怒りの心の解消の仕方についてお届けします。