編集部初 メダル予想

パリ五輪が7月24日(26日開会式)~8月11日までの日程で開催される。
セーヌ川やコンコルド広場、グラン・パレなどを開会式の舞台や競技会場とするなど、歴史ある都市パリの魅力を最大限に活かした大会となる。サンデー編集部は、初の試みとして日本選手団のメダル獲得数を予想。柔道など合計45個を見込む。メダルが期待される注目選手や魅力的な会場など紹介する。
メダル総獲得数「45」
サンデー編集部独自予想

パリ五輪でも活躍が期待される日本選手団。サンデー編集部は一足早く、日本のメダル獲得数を予想した。
メダル総獲得数は、五輪予選の結果や最近の選手の調子などから45個になると計算。そのうち金メダルは15個、銀・銅メダルは合わせて30個とした。過去最多だった前回の東京五輪の58個には届かない数字だ。
金15個の内訳は、男女柔道、男女レスレリング、陸上女子(やり投げ)、男女スケートボード、男子体操、男女フェンシング、新種目の男女ブレイキン。
金メダル獲得の最有力候補は、日本のお家芸、柔道の阿部一二三選手(66㌔級、パーク24)と妹の詩選手(52㌔級、パーク24)だ。直近の国際大会でも優勝するなど充実しており、これまでの実績も併せて考えて兄妹で五輪連覇すると予想した。
パリ五輪からの新競技として注目を集めるブレイキンでは、日本の第一人者〝Shigekix〟こと半井重幸選手(第一生命保険)が、初代王者になれるかが見どころになる。世界からも金メダルの筆頭候補と目される日本のエースが実力を発揮すれば、王座獲得も十分可能だ。

日本選手団の旗手を半井選手と共に務める、国際大会2連覇中のフェンシング・江村美咲選手(立飛ホールディングス)、やり投げの日本記録保持者の北口榛花選手(JAL)も金メダル獲得と予想。北口選手は、今年の国内外での大会で圧倒的強さを誇っており、金は確実視されている。
銀と銅の合わせて30個の内訳は、アーティスティックスイミング、水泳、柔道、レスリング、陸上男子、男女卓球、男女バドミントンなど。このほか、男女自転車、男女バスケットボール、男女サーフィン、男女サッカーの中から幾つかで獲得すると見込んだ。
劇的な試合運びで五輪予選を突破した男子バレーボールが、1972年のミュンヘン五輪以来となるメダル獲得なるかも注目が集まる。髙橋藍選手(サントリー)、西田有志選手(大阪ブルテオン)、石川祐希選手(ペルージャ)のスパイカー三枚看板を中心に歴代最強メンバーをそろえた。彼らの活躍によってネイションズリーグで初の決勝進出を果たし、優勝こそ逃したものの準優勝の成績を残した。その勢いのまま五輪を勝ち抜いてほしいが、データ分析による戦術解析が進んでおり、大会ごとに戦術が変化するため、予想ではメダルは期待できるも金は難しいとした。
注目の新競技 ブレイキン

2024年パリ五輪から正式種目となる「ブレイキン」。1970年代初頭に米ニューヨークで生まれたダンスで、ギャング同士の抗争を暴力ではなく踊りで解決するようになったのが起源とされる。
日本では、タレントの風見慎吾さんが1984年に発表した『涙のtake a chance』で、床を使ったスピン技などを披露して国内に広めたとされ、五輪種目に決定した際には先駆者と話題となった。また当時、風見さんが直接ディスコに出向きスカウトしたバックダンサーたちは、日本におけるブレイキンの礎を築いたとされる。
五輪では1対1で争う個人種目が採用され、DJが流す音楽に合わせて即興で踊り、技術、表現、構成・完成度などを審査員が採点して勝敗を決める。そんなブレイキンのダンスは大きく四つの要素から成る。
①「トップロック」は、立った状態でするステップと上半身の動きを組み合わせたダンスで、最初に動きだす時に自己紹介がてら披露することが多い。
②「フットワーク」は、床に手を付けながら足さばきを披露する動きで、かがんだ状態で素早く足を動かしたり、相手を挑発したりする振り付けも。
③「パワームーブ」は、ヘッドスピンなどブレイキンの代名詞である全身を使った回転技のことで、一番アクロバティックな振り付けであり、難易度も高く一番の見せどころとなる。
④「フリーズ」は、「フットワーク」や「パワームーブ」の途中で動きを止めるムーブ、ダンス中盤の決めや、最後の締めくくりとなる。
競技と歴史 同時に堪能
伝統活かしつつ、新たな試み

パリで3度目の夏季五輪大会が開催される。これまで同都市では、1900年、1924年の2回夏季五輪を開催しており、3回目となる今回は前回大会から100年ぶりと世紀をまたいだ大会となる。最大の魅力は、競技と歴史的建造物を同時に堪能できることだ。
パリでは、五輪初の試みとして、都市の中心を流れるセーヌ川(河川)を開会式に利用。選手1万500人が、アウステルリッツ橋からトロカデロ広場までの約6キロを船で下りながらパレードを行う。河岸の上流側ではチケットなしで無料で見物できることもあり、五輪史上最大の約30万という観衆が、開会式の催しの一端に参加する見込みだ。
また競技会場として、ヴェルサイユ宮殿やグラン・パレなど歴史的な建造物を活用。ヴェルサイユ宮殿に設置された会場で馬術や近代五種の5競技が競われるほか、フランス革命の舞台にもなったコンコルド広場で若者たちがブレイキンやスケートボードなどに熱狂する姿などを見ることができそうだ。
そうした既存インフラや歴史的建造物の積極的な活用は、パリの特色や伝統を活かすためだが、同時に五輪開催に際してのコスト削減の一面もある。2024年五輪大会の招致では、当初ローマ(イタリア)、ハンブルク(ドイツ)、ブダペスト(ハンガリー)なども名乗りを上げたが、いずれも高額な開催費などへの懸念から撤退を表明していた。五輪の継続的な開催のためにも、高騰する開催費問題の解決策となる新たなコンセプトを示す大会としてもパリ五輪は注目を集める。
そのほか、パリ五輪では持続可能性を重視し、史上初となる使い捨てのプラスチックのない大会にすると打ち出している。市内競技会場へのペットボトルの持ち込みを原則禁止とし、給水は再生利用可能なカップの使用を推奨する方向だ。
さらに史上初の試みとして、五輪とパラリンピックで全く同じロゴを使用するほか、男女の選手参加者が5250人で同数にするよう調整するなど、競技外でも新たな試みに挑戦する大会となりそうだ。
チャレンジャーの気持ちで挑む
楽しみと不安が半々
フェンシング・江村美咲選手

パリ五輪・フェンシング、サーブルに出場する世界選手権2連覇中でメダル獲得が期待される江村美咲選手。日本選手団旗手も務める同選手は、トークイベントに出席し、大会への意気込みなどを語った。
―大会前の心境は。
楽しみと不安が半々で、その瞬間で感情も揺れ動いていて忙しない。試合会場が、2010年に世界選手権の会場にもなったグラン・パレという歴史的な建物で、その当時のスタッフの方に話を聞くと、今まで一番すごい試合会場だったと言っていた。そういう試合会場で、五輪を戦えるのは楽しみ。
―世界チャンピオンの実績を持って臨む大会だが、自信や手応えは。
確かに東京五輪の時と比べるとメダルが現実的に考えられる位置にいる。しかし、世界選手権2連覇というと圧倒的で、最強の選手とイメージしてくれるかもしれないが、実は全然そんなことはない。1回目の世界選手権から今日まで、世界選手権以外の試合は優勝できていない。それくらい何が起きるか分からない競技で、まだまだ未熟なところがいっぱいある。チャレンジャーの気持ちで挑みたい。
―キャリアを振り返って、自分を変えた一歩は。
一つのことが、全てを変えたみたいな瞬間はない。小さな一歩が今につながっていると感じる。人がやっていないことにチャレンジすることが好きで、高校に入学する時、まだフェンシングで通信制に入って、みっちり練習している人はいなかった。それで、やってみようという気持ちになった。大学を卒業する時も、まだフェンシングのプロ選手がおらず、就職するより、プロとしてやってみたいと思った。そういう小さな挑戦の気持ちが、今につながっている気がする。
こっちに進んだらどうか、あっちに進んだらどうか、一番後悔のない道は何かと考えた時、自然と挑戦する道が、自分が納得する道だった。
―試合中、相手に向かって踏み込む時の気持ちは。
やはり、すごく怖い。相手との距離とタイミング、その時の状況の全てが噛み合っていないと決まらない。そういうのを瞬間的に判断して、ここで踏み出さないと後悔するんじゃないかと思って、一歩を踏み出す。
―プレッシャーに打ち勝つ方法はあるか。
ある意味、試合本番になったら開き直って、その舞台を楽しむこと。周りの環境とか、試合相手とか気になることはあるが、今何をすべきかだけを考えることだ。
―五輪に向けての意気込み、目標は。
個人と団体でメダルを獲得すること。でも、それ以上に自分の中での強い目標が、自分を信じて、楽しんで、後悔なく出し切ることだ。